共同体ファイブスターアライアンス2周年記念講演会〜「協働で進める、これからの地域づくり〜地域診断から始まる協議会の活性化」〜




ご参加いただいた皆さまへ

10月2日(金)に、共同体ファイブスターアライアンス設立2周年記念講演会を無事に開催することができました。

当日は、筑紫圏域の相談支援事業所、障害福祉サービス事業所、基幹相談支援センター、行政の方々など、地域の支援に関わる80名以上の方にお越しいただきました。

筑紫圏域の外からも、北九州、直方、久留米、古賀、福津他、加えて熊本や宮崎といった県外からもご参加いただきました。

お忙しい中、足を運んでくださった皆さまに心より御礼申し上げます。

私たちの協働体が2周年を迎えられたのは、行政の皆さま、基幹相談支援センターの皆さま、そして日々地域で障害児者の支援にあたっている皆さまのご協力があったからです。

改めて感謝申し上げます。


筑紫圏域という地域の「特殊性」

講演に先立ち、私たちが活動する筑紫圏域について少しお話ししました。

筑紫圏域は、那珂川市・春日市・大野城市・太宰府市・筑紫野市の5市で人口約44万人の地域です。計画相談支援事業所は71か所まで増えていますが、その約半数が1人事業所です。

特徴的なのは、人口44万人規模で自立支援協議会が圏域に1つしかないことです。

同程度の人口規模の久留米圏域では、各市町が協議会を単独で設置しています。

他圏域とは大きく違うことを前提に、今回の先生のお話を聞いていただきたいと考え、最初にご紹介させていただきました。


「協働で進める、これからの地域づくり」

講師には、北九州市立大学 地域戦略研究所 教授の深谷先生をお迎えすることができました。先生は、北九州市と直鞍地区で、長年に渡り協議会の会長を務めておられます。

先生は最初に、「今日の話が答えではない。皆さん1人ひとりに考えてほしい」と話されました。まさに、協議会はひとりひとりが考え、行動し、運営するものということを教えて頂いた気がします。


「これで解決したと言えるのか」— Aさんの事例から

最初に、25歳の男性Aさんの事例が紹介されました。知的障害と自閉症があり、80歳の祖母と50歳の母親との3人暮らしです。ある日母親が救急搬送されましたが、短期入所の受け入れ先が見つかりません。基幹、行政、事業所が動いて、なんとかその夜を乗り切りました。

そして、先生は静かに問いかけました。

半年後、隣の市で別の相談支援専門員が、まったく同じ経験をしていたら?

それは、『その夜を乗り切っただけでは解決とは言えない』ということを意味します。誰かを責めるのではなく、地域を構成する1人ひとりの課題として捉え直す必要があるということです。

そのための視点として、先生より次の3つが示されました。

  • 支援者が頑張っても超えられない壁がある
  • 他の人にも同じことが起きている
  • 複数のケースで同じ構造が見える


「相談支援専門員は地域課題のセンサー」

解決できないことを、すぐに相談支援専門員の力量不足にしないこと。

相談支援専門員の役割は、本人とサービスをつなぐことだけではありません。本来必要なのに「ないもの」に気づき、それを地域に返していくことも大切な役割です。

さらに先生は、サービス管理責任者や事業所職員の方も同じようにセンサーであると強調されました。

「休日夜間の連絡が来て休めない」
「専門人材がいないので受け入れられない」

こういった悩みでも、複数の事業所で起きていれば、それは地域課題かもしれません。


地域に必要な「8つの機能」

1人の困りごとを地域の改善につなげるために、先生は8つの機能を示されました。

  1. 発見する
  2. 集める
  3. 分析する
  4. 仕分ける
  5. 解決策を作る
  6. 意思形成する
  7. 実行する
  8. 評価し、個別支援へ返す

この8つは循環するもので、それを地域として回す仕組みが自立支援協議会です。

先生は「自立支援協議会は会議をする場ではない」とはっきり言われました。

報告して終わる会議では、協議会が機能したことにはならないということです。


「俺じゃねえし」を「私ごと」に

相談支援専門員、サービス事業所、主任相談支援専門員、基幹相談支援センター、行政、部会、協議会、医療・教育・就労の関係機関。

それぞれについて、陥りがちな捉え方と本来の役割が整理されました。

スライドの「俺じゃねえし」という吹き出しには会場から笑いが起きました。

それでも「せっかく来たのだから、私ごととして捉えてほしい」という先生の言葉は、参加者の皆様にも届いたのではないかと思います。


3つの協働 —「一緒に時間を過ごすこと」ではない

1人では回せないからこそ、協働が欠かせません。

先生は3つの協働を挙げられました。

  • A:相談支援事業所間の協働
    孤立しがちな事業所がケースを持ち寄り、共通課題を発見する
  • B:官民の協働
    現場にしか見えないことと、行政にしか動かせないことを持ち寄る
  • C:分野を超えた多機関の協働
    課題が決まってから、それを解くのに必要な機関を目的をもって呼ぶ

先生は「協働とは、みんなで一緒に時間を過ごすことではない」と話されました。

それぞれが違う機能を担い、それをつないでいく実務があって初めて協働と言えます。

「意味のない会議はやめましょう」という率直な言葉に、うなずく方も多くいらっしゃいました。


私たちの地域はどこで止まっているか

休憩後のワークでは、8つの機能のうち自分の地域のどこが詰まっているかを、参加者それぞれが点検しました。

結果は、星印をつけた場所が人によってばらばらでした。

先生の「全部詰まってるじゃん」という一言に、会場は苦笑いに包まれました。

この結果自体が、地域の現状を映していると感じています。

同じ地域にいても、見えている詰まりが違う。

だからこそ持ち寄る場が必要だと、改めて実感しました。


「熱心な人がいること」と「仕組みがあること」は違う

先生は、8つの機能を担っているのは組織なのか、特定の誰かなのかと問いかけられました。

「○○さんが頑張っているから回っている」のなら、それは地域の仕組みとしては機能していません。

その人がいなくなっても回る仕組みが必要です。

そのうえで、筑紫圏域に合わせた再設計案も示していただきました。

特に難しいのが「4. 仕分ける」です。

市レベルでまず仕分け、市単独で解けない課題は圏域に上げる。

圏域では、課題を整理し進捗を管理する実務的な調整機能が必要になる、というご提案でした。

その際の3つの原則も示されました。

  • 新しい会議を増やさない(既存の場に機能を割り当てる)
  • 市と圏域を分ける(上下ではなく、課題の射程の違い)
  • 部会を課題解決機能にする(開催回数ではなく、何を解決したかで評価する)


「地域課題は、最初から地域課題という顔をして現れない」

講演の最後に、先生はこう語られました。

『地域課題は、最初から地域課題という顔をして現れない。1人の困りごとから始まる。』

拾う、集める、分析する、つなぐ、解決する、本人の生活へ返す。

そして「会議を動かすのではなく、地域課題を動かす」。

この言葉を、私たち協働体としても大切にしていきたいと思います。


事前質問への回答

事前にいただいた質問にもお答えいただきました。

支援者のセルフケアについての質問では、先生が学会で見てきたミニチュア作品のダジャレを紹介されました。会場は和やかな雰囲気になりました。

人口7万人規模の自治体で協議会の単独設置を検討している方からの質問には、次のようなポイントを挙げていただきました。

  • 地域課題から市の意思決定までの距離が近いことを強みにする
  • 部会を増やしすぎない
  • 障害福祉だけで完結させない
  • 行政だけで事務局を抱えない

質疑応答:会場からの声

質疑応答では、各地から多くの声をいただきました。

18歳の壁について
那珂川市の放課後等デイサービス関係の方から、卒業後の就労系事業所への橋渡しについて質問がありました。

先生からは、北九州市でも同じ課題が上がっていること、他市にも共通する課題として圏域の部会で扱うのが良いのではないかとの助言がありました。

基幹相談支援センターへの「丸投げ」問題
古賀市の基幹相談支援センターからは、障害に限らずあらゆる相談が集まる「街の相談屋」状態になっているという悩みが出ました。

先生は「関わってもらわないと受けられない」と言い続けることの大切さを語られました。

協働体制と協議会のつなぎ方
熊本市の方からは、協働体制を協議会にどう参画させるかという質問がありました。

協働体制は地域課題を集める有力な手段になる、というお話がありました。

個別の「問題」を「課題」として吸い上げるには
協働体制を組む事業所の方からの質問です。

先生からは、事例検討会ではなく、まず事業所紹介の場から始めてはどうかという提案がありました。

時間をかけてでも、1人事業所を孤立させない仕組みをつくることを優先する、という考え方です。

各地の取り組み紹介
久留米市の分科会での取り組み、北九州市の地域生活支援拠点での実践報告など、他地域の具体的な取り組みも共有されました。

主任相談支援専門員と基幹の役割
直方地区からは、主任と基幹の役割の明確化について質問がありました。

立場の違う人と「戦わずに話し合う」には
発達障害者支援センターの方からの質問です。

先生は「ここまでは引き受ける、ここから先はお願いしたい」という責任の所在を、最初に明確にしておくことが大切だと答えられました。

皆さんの声を聞く中で、筑紫圏域の課題が他の地域とも重なっていることがよく分かりました。


主催者として感じたこと

今回の講演を通じて最も強く感じたのは、筑紫圏域では、それぞれが頑張っているのに、それがつながっていないということです。

計画相談は那珂川市、利用者は大野城市在住、社会資源は春日市。

この地域ではよくあるケースですが、課題をどの市の協議会に上げればいいのか分かりにくい現実があります。

まずは5市がお互いを知り合うこと。そこが私たちのスタートだと考えています。

これから人口減少社会を迎え、社会資源には限界が見えてきます。

それでも「資源がなければ終わり」にはしたくありません。

だからこそ、自立支援協議会を通じて課題を共有し、ともに解決していく仕組みが必要です。協働体として、その一端を担っていきたいと思います。

深谷先生、そしてご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。


お知らせ

  • 九州地区障害者相談支援事業所合同研修会 鹿児島大会
    12月3日〜4日開催。ぜひご参加ください。
  • 計画相談支援室ノーマ 公開研修会
    毎月第3月曜日18時から。グループスーパービジョンやアセスメント手法の勉強会を行っています。
  • 福岡・筑紫地区地域福祉支援協会の勉強会
    博多南駅前ビル2階で定期的に開催しています。


来年もまた、この場で皆さまとお会いできることを楽しみにしています。




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