計画相談支援事業所の協働体制の弊害について、あえて考えてみる


令和6年度報酬改定に伴い、湧くに湧いている計画相談支援事業所ですが、特に「協働体制」についての動きは、私たちも含めて水面下で着実に動いている印象を強く感じます。

私たちも例外なく、その動きに合わせて情報収集や実際に協働体制の構築にむけて話題の提供を行っている状態ですが、その方向が具体的になればなるほど、慎重かつ冷静にならざるを得ない印象を受けています。

実際に私自身は、現在所属している法人が運営する3つの事業所の運営に関わり、職員については約15名程度の組織ではありますが、たった15名程度の組織であっても、なかなか意思疎通や質を維持することに難しさを感じています。

今回の計画相談支援事業所の共同体制は、私にとってはまさに、その難しい舵取りを、別法人に所属する方々を一緒に組み上げていく必要があるのではと考えているのですが、今の状況をみると、加算ありきの方向に進んでいるだけで、本来の目的である「質の向上」「相談支援の面的整備」という側面をどこまで念頭に入れて検討しているのかは、まだまだ見えてこない実情があります。


とはいえ、まずは加算で経営を安定させるという点では、私自身も否定するつもりは全くないのですが、実際に計画相談に対する周囲の目は、単に単価が上がっているという事実を知る人たちがこれから増えてくることによって、計画相談に対するネガティブな感情を抱えるきっかけにもなることを、私たち自身がよく考えておくべきだと思います。


私自身も、実地指導後、代理受領証を利用者や保護者に送るようになってから、現在、機能強化加算Ⅲを含む加算を合わせて請求すると、当然、サービス等利用計画の作成を行うことで、約2万円を超える請求を行うことになるのですが、果たして自分の働きがその金額に見合っているのか?を意識せざるを得ません。

それで、協働体制を構築して、機能強化加算Ⅰを取得した場合は、さらに請求金額が増えることになりますが、その結果、万が一でも利用者や保護者に金額の不満を抱かせようならば、それこそが私たちの今の実力でしかないとしか言いようがありません。

まして、その評価が「自分の所属する相談支援専門員だけ」ならまだしも、協働体制となれば、他法人の相談支援専門員のことも意識していく必要があるとすら感じます。

もちろん、それはそれぞれの法人の問題であって、いくら協働体制を組んでいるからといっても、他の法人の相談支援専門員の質までは責任は負えないということをいえないこともないのですが、ある意味、行政や障がい福祉サービス事業者は、「それだけ一緒になって高い単価をとっておいて、その程度でしかないのか?」ということを、考えないわけはないと思うのです。

ましてや、基幹相談や委託相談を含む、地域で中核的な事業所としてみなされている計画相談支援事業所と一緒になれば、所属する事業所も、また中心的な事業所も、その責任を放置するわけにはいかないと思いますし、それを無視し続ければ、こういった制度そのものの存在意義すらなくなってしまうと思うのです。


「研修をしたところで」という声はあると思いますが、私がいいたいのは、研修をすることそのものが重要ということではなく、そういった声に対してどのように組織として動くのか?周囲に示すのか?が重要だと思うのです。

なぜ、そこまで思うのか?ということですが、先日、私の事業所に所属して1年を迎えた同僚が作成したサービス等利用計画をたまたま見たときに、その文章の書き方や内容が、まさに私自身が書いている書き方や内容とほとんど同じことに気がつきました。

そして、これまでも数多くの相談支援専門員を、同じ地域に送り出してきた私として、送り出した相談支援専門員もまた、私の書き方や内容に近いかたちで、サービス等利用計画といった書類を作成していると思うのです。

それは、提出先である地方自治体ですが、「この書き方はノーマさんの書き方ですね」と言われるくらいです。


しかし、私が言いたいのは「私の書き方と同じだからすばらしい」ということではありません。

それは、私の書き方に近くなるくらいに、私のそばで同行し、事業所でフィードバックを行い、書類作成の練習を重ねたり、なぜ、そういった書き方をするのかといった研修を行なっている、そういった一連の機会をきちんと提供しているという事実を、作成した書類から感じさせてくれることなのです。

その結果が、可能な限り、地域の計画相談の品質を確保しようと試みてくれている事業所という一定の評価を得られることができるのです。

それこそが、地域の計画相談支援に対する「一定の質」ということになり、そういった地域の役割を担っている事業所ということにつながるのではないかと考えるのです。


もちろん、私自身の事業所と同じ「金太郎飴を切ったような」事業所を増やしたいのではありませんし、そこから、自分らしい支援のあり方を模索することが、それぞれの事業所の個性であることは言うまでもありません。

しかし、少なくとも私の事業所で研修を行ってきたという側面でいえば、その代表である私にとっても、研修を受けた本人にあっても、「そこで研修を受けてきた」ということが、地域の計画相談支援事業所としての、ひとつの「品質保証」になることに意味があると感じます。

それこそが、「協働体制」に期待されている、求められているもののひとつなのではないかと思うからこそ、協働体制前の、今の計画相談支援事業所としてのあり方や振る舞いが、とても重要になるということは言うまでもありません。


協働体制を組む事業所に上や下はありませんが、そうであっても、協働体制を組む目的や根拠といったベースの共有を図らずして、協働体制の目的を達成することは、私自身、困難ではないかと思いますし、結果的に、単価だけが上がるだけで、利用者やサービス事業所に何もメリットはないといった周囲から辛辣な評価が広がるようであれば、この制度は、次の報酬改定では散々な結果をもたらすのではないかとすら思うのです。

協働体制を構築する相手に何を求めるのか?は、事業所それぞれ違うと思いますが、少なくとも、「なんのために協働体制を組むのか?」を共有しておかないと、自分の事業所の信頼を損なう結果になることにもなりません。


協働体制は、ある意味、集団をつくることでもあります。


それは、地域にとって「好意的」にも受け止められますし、場合によっては、「脅威」にも受け止められます。

その人が、あまり快く思っていない計画相談支援事業所が所属している「協働体」であれば、その事業所のことについて、協働体制を組む他の事業所についても、一定の距離を取らないといけなくなるといった心理も働くかもしれません。

つながるからこそ「言えること」もあれば、全く逆に「言えなくなること」も増えてくるのが、協働体制のマイナスな側面です。


「考えすぎ?」かもしれませんが、公益性の高い、責任ある役割が求められるからこそ、逆に、一定の距離を担保せざるを得なくなることも考えてしまう、今日この頃なのです。

ノーマは、協働体制構築に向けて強く推し進めていきます。

それは、こういったリスクも理解した上で、それぞれの事業所代表者と協議を重ねていきます。

同時に、協働体制を構築するどの事業所がイニシアチブを取り、協働体制の流れを作っていくのかも含めて、きちんと責任の所在を明確にしていきたいと思っています。

もちろん、私たちは「定期的な研修」も行いますし、それを共有できる事業所との体制構築を目指します。


加算ありきの協働体制の構築よりも、将来を見据えて周辺地区を含む顔の見える体制づくりを目指して、様々な事業所との協働体制構築を図っていこうと思っています。



コメント