【報告】障がい者相談支援ネットワークふくおか 福岡ブロック研修に参加して

はじめに

この度の研修では、八女地区と飯塚圏域における地域生活支援拠点等の実践報告を通じて、拠点整備の具体的な取り組みと、私たち相談支援専門員に求められる役割について学ぶ貴重な機会をいただきました。両地域とも10万人規模の広域圏域で、それぞれ異なるアプローチで拠点整備を進めておられ、当地域での今後の取り組みに多くの示唆をいただくことができました。


拠点整備の本質 ー「知っている」から「使いこなす」へ

冒頭の趣旨説明で、「地域生活支援拠点等は障害のある方が安心して地域で生活を支えていくインフラ整備である」そして「知っている段階から使いこなすレベルへのレベルアップを目指す」という言葉が印象的でした。拠点整備は単なる制度対応ではなく、地域全体で支える「面」の体制づくりなのだという基本認識を、改めて確認することができました。

また、相談支援専門員に期待される役割として、「緊急時の対応を円滑にするための事前登録」「リスクを織り込んだサービス利用計画の作成」「個別事例から見えた地域課題を協議会に上げていく」という3点が示され、拠点整備における私たちの位置づけが明確になりました。


八女地区の取り組み ー「明文化」による仕組みづくり

緊急一時的な宿泊事業の独自性

八女地区の大池コーディネーターからは、10年間の拠点整備の歴史と具体的な取り組みを伺いました。特に印象的だったのは「緊急一時的な宿泊事業」の仕組みです。最大5日間、1日12,000円の報酬で、市町村決定による緊急受け入れを行うこのスキームは、「決定通知書が契約書の代わりになる」という明確な責任の所在により、受け入れ施設の心理的ハードルを下げているのです。

大池さんの「5日間ならどうですかと聞くと、受け側としては5日間なら頑張ってみようかなという気持ちになる」という言葉からは、期限を区切ることで協力を得やすくする工夫が伝わってきました。


「事前登録」と「平時からの見守り」の二本柱

事前登録の事例として紹介された、80代の父親と60代の精神障害のある本人の世帯のケースは、非常に示唆に富むものでした。「大丈夫です」と言いながらも事前登録に同意され、実際に父親の入院時には4日間の説得を経て緊急宿泊につながり、最終的には福祉サービス利用に至ったという経過は、まさに「備えあれば憂いなし」を体現していると感じました。

また、8050問題を抱える世帯への「平時からの見守り」として、引きこもり支援と連携した内職の仕事を持参する訪問や、手紙のやり取りを通じた関係構築など、伴走型の支援実践が紹介されました。「自ら困ったことを相談できない方」へのアウトリーチの重要性を、改めて認識させられました。


体験ルームの意義

民間アパートを借り上げた体験ルームは、精神障害のある方が「ちょっと家族と距離を置いて考えたい」「転居先で症状が出るか試したい」といったニーズに対応しており、年間10〜15名、100〜120日程度の利用実績があるとのことでした。大池さんの「地域移行支援の対象者が把握しやすい」という言葉の通り、この体験ルームの存在が地域移行を促進する触媒になっていることがよく理解できました。


仕組みの「明文化」という遺産

大池さんが繰り返し強調されたのは「明文化」の重要性です。「今までやってきたことを明文化して、仕組みとして体系化していくことが拠点整備の意義」「私がいなくなっても仕組みとして残る」という言葉は、属人的な支援から組織的な支援体制への転換を示しています。実際、ガイドラインを作成し、地域体制強化協働支援加算の活用に向けて4年かけて様式や実施フローを整備している取り組みは、まさに「使いこなす」レベルへの到達を目指すものだと感じました。


飯塚圏域の取り組み ー基幹センター内での機能発揮

拠点コーディネーター配置に至る経緯

飯塚圏域の森田コーディネーターからは、基幹相談支援センター内にコーディネーターを配置した経緯と現在の取り組みを伺いました。令和2年頃に緊急事案が立て続けに発生し、「週末の夕方にグループホームから退所を余儀なくされた」「他県から見切り発車で転入してトラブルが発生した」といった事例を行政と共に対応する中で、体制整備の必要性が共有されたという経過は、非常にリアルで説得力がありました。

森田さんの「困難事例や緊急事案が続いたこと」「行政も一緒に介入してもらうことで対応のイメージや必要性を理解してもらえたこと」「行政担当者が同じベクトルでいてくださったこと」という3点の指摘は、拠点整備を進める上での重要な条件を示していると思います。


日中サービス支援型グループホームの活用

飯塚圏域では圏域内に6か所の日中サービス支援型グループホームがあり、これを緊急受け入れ先として優先的に活用しているそうです。「短期入所を併設して、緊急一時的な宿泊の場を提供する」という事業の意図を拠点整備事業と結びつけて解釈し、協力施設として位置づけている点は、既存資源の有効活用として大変参考になりました。

森田さんの「事業の意図の説明や役割を明確にしておくことで依頼がしやすくなった」という言葉からは、事業所との丁寧な関係構築の重要性が伝わってきました。


相談支援専門員に求められる視点

森田さんが強調された「基本相談の部分を重要視せず、サービス調整から入っている実態」への問題提起は、とても重要だと感じました。「計画相談の範囲のみでの生活支援の見立てが終了していないか」「今は生活がなんとか成り立っていても、何か一つが欠けることで生活の継続ができるか」という視点は、私たち相談支援専門員として常に持ち続けるべきものだと再認識させられました。

また、「緊急事案が発生したら、相談員さんが主導で動いていただく」「受け入れ先について調整を図っていただくのも相談員さんが主体」という役割分担の考え方は明快で、拠点コーディネーターに丸投げするのではなく、相談支援専門員が主体的に動き、コーディネーターはサポートに回るという構図がよく理解できました。


多職種連携の実践

民生委員定例会への巡回(飯塚市12カ所、嘉麻市4カ所、桂川町1カ所)や、精神保健福祉関係者会議(通称Pミーティング)、暮らし部会・相談支援部会への参画など、多職種との顔の見える関係づくりに地道に取り組んでおられる姿勢が印象的でした。森田さんの「障害分野に関する支援介入になると戸惑いがあり、相談先が馴染みがないので気軽に相談ができない」という民生委員の実態把握は、今後の地域づくりの課題を示唆していると感じました。


パネルディスカッションから

質疑応答では、各地域の相談支援専門員から具体的な質問が出され、より実践的な情報交換が行われました。

筑紫圏域からの「潜在的なニーズをどう把握するか」という質問に対して、大池さんは「社協、地域包括、ケアマネジャー、民生委員など他分野から個別に丁寧に回る」「初回訪問は慎重に作戦を立てる」「個人情報に配慮しながら地域を回っているという形で接触する」と回答され、アウトリーチの具体的手法を学ぶことができました。

久留米圏域からの「空床型でスタートする場合のコーディネーターの動き方」という質問では、森田さんから「日中サービス支援型グループホームの事業の意図を繰り返し説明する」「年1回の全体会での報告と意見交換」「受け入れしやすいような研修企画の検討」という回答があり、資源を活用するための地道な働きかけの重要性が示されました。

また、八女地区では「令和6年12月から面的整備の加算導入で一気に登録施設が増えた」という情報も共有され、制度改正を活用した体制整備の可能性も見えてきました。


当地域での活用に向けて

今回の研修を通じて、拠点整備において以下の点が重要であると理解しました。

1. 責任の所在の明確化

両地域とも、緊急受け入れにおける市町村の責任を明確にすることで、受け入れ施設の心理的負担を軽減しています。

2. 事前登録と平時からの見守り

緊急事案を緊急でなくするための事前準備として、事前登録制度と8050問題等へのアウトリーチが不可欠です。

3. 相談支援専門員の役割

基本相談でのアセスメント、事前のリスク把握、地域課題の抽出という本来業務の徹底が、拠点機能を支える基盤となります。

4. 仕組みの明文化

属人的な対応から組織的な体制へ移行するため、ガイドラインや様式の整備が重要です。

5. 多職種連携の地道な積み重ね

民生委員、社協、地域包括、地活センター、医療機関など、顔の見える関係を一つひとつ丁寧に構築していく必要があります。

6. 既存資源の有効活用

新たな施設を作るのではなく、日中サービス支援型グループホーム、短期入所、民間アパートなど、既存の資源を拠点機能として位置づける工夫が求められます。


おわりに

大池さんの「拠点整備とは、今までやってきたことを明文化して、仕組みとして体系化していくこと」、森田さんの「今までも対応してきたし、できる土台はある。それをどう構造化していくか」という言葉が、研修全体を通して最も印象に残りました。

拠点整備は特別な何かを新たに始めることではなく、私たちが日々の相談支援で行ってきたこと、感じてきた課題を、地域全体で共有し、仕組みとして整えていく営みなのだと理解できました。そして、その中心には常に「親亡き後も安心して地域で暮らし続けられる」という当事者・家族の願いがあります。

相談支援専門員として、個別のケースに丁寧に向き合いながら、そこから見えてくる地域課題を言語化し、協議会や拠点事業につなげていく役割を果たしていきたいと思います。今回学んだ具体的な取り組みを当地域の実情に合わせて活用し、「知っている」から「使いこなす」段階への移行に貢献していきたいと考えています。

両地域の実践報告とパネルディスカッションを通じて、拠点整備の道筋が明確に見えてきました。このような貴重な学びの機会をいただいたことに感謝し、今後の実践につなげてまいりたいと思います。



終わった後に食べた蕎麦が美味しかった〜

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