《回想》平成27年4月の計画相談に対する私の想い

サンクスシェアさんが、ノーマに週1回研修に来られるようになりました。

私としては、「何をお伝えできるのか?」という不安もありましたが
サンクスシェアさんの計画相談に対する将来への危機感や責任というような
熱いお話を伺う中で、「私が断る理由は全くないな」という思いに至り
僭越ですが「どうぞお越しください!断る理由はないので!」と
お答えさせていただきました。

私自身は特別なことをしているとは思わないのですが
そんなモチベーションの高い職員さんたちと一緒に同行できることは、
私にとっても良い刺激なのです。

そんな想いを抱くなかで、私が平成27年4月に書いた文章のことを思い出しました。

平成27年4月といえば、
まさに、全国一斉に正式に「計画相談」が始まったときです。

当時の福岡県ならびに福岡市は、計画相談導入率が全国最下位でした。

そんな中で当時進んでいた計画相談。

誰に向けて書いたのかすら覚えていませんが
当時の私の計画相談に対する私自身の思いが書かれています。


よくもまぁ、こんな文章書いていたなと(笑)


当時は、「3階ラボ」という事業所に所属していましたが、
私も計画相談の将来に危機感を持っていたひとりだということがよくわかります。

サンクスシェアさんがお越しいただいて
そういった話をしたのも、何かの縁なのかなと考え
おはずかしながら、その文章を公開することにしました。


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3階ラボの未来。計画相談の未来。


このままだと計画相談に未来はないのではないか。

 心配性である私は、自らが管理する『福祉利用計画作成室 3階ラボ』の現状と今後について考える中で、計画相談の今後についてかなりの危惧を持っています。さらに先日、3階ラボのひとりのスタッフが、福祉職のベテランや仲間が何十人と集まった飲み会の席で、とある事業所の職員さんから「計画相談は必要無い」ときっぱり言われ、さらその周りにいる人たちみんなが頷いていたと私に報告してくれました。その時は、何も言えずにただただ黙ってビールを飲んでその場をしのいだそうですが、そのショックはきっと大きかったのだろうと思います。批判を恐れず言いますが、そのスタッフは、周囲から批判を受けるような中途半端な仕事をするような人間ではありません。ですので、報告があったときに一番怒りを覚えたのはこの私であり、そのスタッフの実際の仕事ぶりをみてその話をしたわけではないにも関わらず、そのようなことを言うことに対して、同じ福祉を担う専門職として許せませんでした。

 ただ同時に、私たちの想像以上に「計画相談不要論」は、様々な事業所に広がっているという事実を突きつけられた気がしました。さらには、なぜそこまで計画相談に対して周囲が否定的・拒否的になってしまった理由を考えるきっかけになりました。それ以降、意識しながらいろんな方の声に耳を傾けるようになりました。そして、いろんな話を伺う中で、ひとつの恐ろしい結論に達しました。そのきっかけをつくっているのが、紛れもない私たち相談支援専門員の普段の行動や言動が理由でそのように思われてしまっているという事実です。「このままだと、本当に計画相談の未来はないのではないか。」そんな危惧を持ち始めたのも、ここ最近のことです。ですので、現在の私たち3階ラボの状況も含めて、今後の私たちの進むべき道を管理者である私なりに考えつつ、文章に起こし、整理できたらと考えてこれを書いています。決して特定の人に見せたいために作っているわけではありませんので、あしからずご了承ください。また、これらの文章は、3階ラボ管理者である私の個人的な意見であるため、すべての地域や事業所に当てはまるものではありません。繰り返しますが、誰かのためにかいているわけではないので、これを読んだ人が何かの参考にしてくれる分にはかまいませんが、公的な判断などに利用されても、3階ラボの運営法人ならびに関連施設、3階ラボまたはそのスタッフは一切の責任を負いませんのであしからずご了承ください。

平成27年4月18日
NPO法人とびら 福祉利用計画作成室 3階ラボ  
管理者兼相談支援専門員 寺川 直一


計画相談は、単につくれば良いというものではありません。

 はじめに、私たち特定相談支援事業所ならびに相談支援専門員は、なぜ国ならびに厚生労働省が「計画相談」を始めたのかをきちんと把握し、考えていく必要があります。そのことをきちんと踏まえた上で計画相談をはじめていかないと、様々なクレームや問題が生じることになりかねないのです。いや、むしろ私たち3階ラボに対しても、計画相談についての質問や疑問の声が後をたたないのです。私たち『福祉利用計画作成室 3階ラボ』は、母体施設が設立を決定して以降、事前に、私は計画相談を導入して成功している地域の事業所を訪問し、計画相談の実情を直接お伺いし、私たち自身が実際の計画相談の流れを把握した上で、事業申請から計画相談の流れを福祉課の窓口の方と一緒につくってきました。当時はまだ、福岡県の計画相談導入率は全国最下位であり、さらには、私たちが担当範囲とする福岡市、ならびに春日市、那珂川町といった4市1町は福岡県内でも最下位である地区でもあったため、福祉課そのものがどのようにまだまだ計画相談をどのように導入していくかを模索している時でした。とはいえ、私たちが設立した平成26年2月以前にも、すでに特定相談支援事業所は近隣に数は少ないながらも存在していました。にもかかわらずスタート出来ていなかったことは、行政や事業所が積極的に取り組んでこなかった結果だと思います。そして、厚生労働省が平成27年度4月以降の猶予期間を設けないと通達が行われて以降、福岡市や筑紫地区4市1町が大きく混乱したことは、みなさんもご存知の通りです。とにかく『計画相談の導入を!』を旗印として結果のみを評価しすすめてきたことこそが、計画相談の中身をダメにしてしまった元凶のひとつであると私は思います。すでに、利用者さんやその家族、そして何より事業所が、計画相談に対する不信感を募らせているのです。もはや、「計画相談不要論」まで出ているのが現実です。そのことを踏まえて、私たちは慎重に計画相談をすすめていかなければならないのです。


内容を確認・指摘および指導できる存在が身近にいないことが大きな問題。

 地区によっては、スーパーバイザーがいて、かなり濃密な内容の勉強会が行われていると聞きます。本当に羨ましい限りです。逆に、私たちが担当する地域の現状はなかなかそういうわけにもいかないようです。第1に、「特定相談支援事業所」「障がい児相談支援事業所」の設立を、居宅介護サービス事業所にまで拡大して依頼している状況の中で、すべての事業所を研修に参加させることは事実上不可能であることがあげられます。第2に、とにかく朝から夜まで、新規の受け入れが止まることがないため、研修に時間を割くことが事実上不可能であることが挙げられます。第3に、特定相談支援事業所が本格稼働してまだ間もないため、スーパーバイザー自体が身近なところにいないことが挙げられます。

 制度上、相談支援事業所が黒字化することは事実上困難を極めます。ですから1〜2人と少ない人数で事業所を運営されているところが多い中で、研修に参加する事自体が、多忙な状況の中では困難であると言えます。3階ラボでも仕事が午後8時を過ぎることも常です(帰宅後も仕事をすることもあります)。スタッフ増員時は、実際の計画相談の現場におよそ3ヶ月、同伴をさせて、実際にやり方や進め方をみせて、次に実際にやらせてみせて、ひとりで担当させるようにしています。その中で、計画相談のあり方や考え方をきちんと伝えていくようにしています。伝えていく以上、やってみせなければいけません。そのためにも、個々人が間違ったやり方を伝えないように、十分に配慮していかなければならないのです。そして、しっかりと利用者さんのアセスメントをとり、その上でご本人がこれまでの人生の中で過ごしてきた思いを感じながら、私たちはサービスの利用計画をつくっていく必要があるのです。そう考えたら、簡単に利用者さんの計画をつくることなどできないはずです。それができてしまうあたりが、今の相談支援専門員の傲慢さだと思うのです。そして、そのことを指摘したり、指導する人はなかなか存在しないのが実情です。受け付ける福祉課も、計画の中身については、利用者さんの署名・了承をもらっている以上、とやかく言える状況ではありません。本来は、お互いの計画の内容をチェックできる体制を作るべきだと思うのですが、あとは自立支援協議会の部会や地域の勉強会などで行ってもらわなければいけない問題だと思います。


利用者さんやご家族は、意見を言えるはずもありません。

 基本、利用者さんならびにその家族は、相談支援専門員に対しては半信半疑で迎え入れています。それもそのはずです。これまで福祉課に行けば、しばらくして受給者証が自宅に届いていたのです。せいぜい、区分が必要なサービスを利用する方については、訪問調査員が後日、訪問にくることくらいです。それがどうでしょうか。今度は、「計画相談の書類をつくってもらってください。」と、福祉課で突然言われて、「一覧から特定相談支援事業所を選んでください」と言われるわけですから、肝腎な利用者さんはさらに輪をかけて混乱するわけです。知らない、何をしに来るのかわからない相談支援専門員が、突然自宅にやってきていろいろと根ほり葉ほり尋ねられて、突然、署名や印鑑を求められるわけですから、私が逆の立場なら、やはり不信感を募らせていることでしょう。しかし、そんなご本人は、おそらく相談支援専門員に対しては何も言わないと思います。なぜなら、それらすべての行為が、本人が受給者証を自宅に届けてもらう上で必要な手続きということだけは誰もが知っているからです。とにかく、作られたサービス等利用計画の中身が何であれ、署名して提出してもらわないと受給者証が届かないからです。もしかしたら、よくわからない、納得できていない計画かもしれません。それでも、利用者さんが「良いです」と言わざるを得ない状況にいることを、どれくらいの相談支援専門員が知っているのでしょうか?少なくとも、私は未だに利用者さんにうまく説明して、納得した上で署名をしていただいているのかどうかは自信がありません。

「制度上、必要ですから。」は、最終手段。

 言いたくなることは、私も痛いほどわかります。実際に、私たちのお作りする「サービス等利用計画」が受給者証を届けてもらうには必要であることは間違いないので、実際に嘘を伝えているのではありません。ただ、であるがゆえに、相談支援専門員は慎重に慎重を重ねて計画相談を進めていかなければならないと思うのです。先ほど説明した通り、ご本人やご家族は、訪問する時点で相談支援専門員に対して、大なり小なり不信感を抱えているのです。だからこそ、計画相談に入る前にきちんとした導入に関する丁寧な説明を行い、ご本人やご家族がしっかりと納得した上で進めていくべきなのです。3階ラボでは、契約に伴う口頭での説明だけではなく、噛み砕いたことばで説明している手引きをお渡しするようにしています。例えご本人が読めなくても、周囲にいる支援者が目を通せばわかる内容にしています。さらに加えて、ご本人やご家族には、「この場ではなかなか理解できないと思いますので、遠慮せずに同じことでも何度でも聞いてください。気づいたときに遠慮なく連絡してください。」と、伝えるようにしています。その上で、ご本人に寄り添った計画を作成できれば、ご本人もご家族も最後は、笑顔で見送っていただくことができます。そこから初めて、私たち相談支援専門員と、利用者さんとそのご家族の信頼関係が構築できるのです。


サービス利用の根拠を、1行にすべきではないと考えます。

 相談支援専門員のみなさんは、契約とアセスメントにどれくらいの時間をかけているのでしょうか?私は、未だかつて新規の利用者さんとの契約とアセスメントをとるのに、どんなに早くても1時間半をきることはほとんどありません。それでも足りないと思ってしまうのですが、やはり、相手も時間をかけすぎると疲れてしまいます。場合によっては、集中力がきれてしまう方もいますので、ケースバイケースとしか言いようがありませんが、それでも、誤解や不信感が生じないように丁寧に進めていくと、どうしても1時間半から2時間はかかってしまうのが実情です。それだけの時間をかけて契約や聞き取りを行いながら計画の作成に入るのですが、お見せして、ご署名をいただく「サービス等利用計画案」の中身は、1つのサービスのみを利用している人については、たった1行の目標選定という方が多いと聞きます。しかも、名前を変えても誰にでも当てはまるような目標を記載されている方がほとんどらしいのです。

 では、それは間違いなのか?と問われたら、決して間違いとは言えません。むしろ、それでも全く問題ないといえるでしょう。署名をいただければ、どんな内容の支援計画でも、問題は全くありません。しかし、問題ないからいいのか?と思う部分でもあります。私たち相談支援専門員が相手の気持ちに寄り添っているかを問われる部分だと思うのです。たった1行の計画のために約2時間も束縛され、いろんなこれまでのことを根掘り葉掘りきかれたら、みなさんどう思うのでしょうか?私たちはそこをきちんと考えていくべきだと思うのです。時間を割いているのは私たち相談支援専門員ではなく、利用者さんでありご家族であることを忘れてはいけないのです。利用者ご本人やご家族が、気持ちを共有してお互いがとても充実した気持ちになれることが大切だと思うのです。

 私たち3階ラボがこころがけているのは、何を見なくても計画を見ただけでモニタリングが可能な計画を作ることです。要は、ご本人の思いや気持ちを聞き取り、アセスメントを整理することで浮かび上がる課題を計画に目標として落とし込んでいくのです。ですから、私たちはモニタリング時には、計画だけ見ることで私たちが、利用者さんの何を聞くべきか、何を確認すべきかがわかるように作成しているのです。『利用者さんの希望を叶えるために必要な課題・目標=わたしたちが最も状況を確認すべき部分』でなければ、私たちは何をどのように状況確認をすればよいのでしょうか?


十分にアセスメントをしないことが問題です。

 計画相談の中で、一番なにが重要か?と問われたら、それは迷わず「アセスメント」と私は答えるでしょう。アセスメントがきちんとできなければ、私たち相談支援専門員は、ご本人の障がいや生活のし辛さを共感することも、理解することもできません。3階ラボが一番時間をかけて行う作業の一つです。「見えないニーズ」「本人が気がついていないニーズ」に私たちが気づくのも、アセスメントを取る中で見えてくることなのです。アセスメントを飛ばしてしまうことは絶対にありえないですし、私たちが時間をかけてアセスメントをとることで、利用しているサービス事業所にフィードバックすることが重要であり、逆に、アセスメントを第三者に投げてしまうことは、相談支援専門員が相談支援専門員であることを放棄しているようなものです。アセスメントは、必ず私たちの手で行うことが、私たち相談支援専門員の絶対条件です。

※余談 最重度の利用者さんのみを行うと、処理速度が速くなる傾向があることに気がつきました。「何もできない」ということで、すべてのチェックが「できない」で良いので、事務処理が簡単なのです。そこに気がついた事業所は、入所施設の最重度のみを引き受けることで、新規申請処理を1日6〜8件と行うことで、月に100万程度を荒稼ぎしていると耳にしたことがあります。しかも、モニタリングは入所施設の場合は1年に1回ですので・・・なんだかなぁと。


すぐに個別支援計画の提出をもとめるのはなぜだろう?

 私が一番理解に苦しむのは、なぜ、サービス等利用計画を作成するのに、事業所のサービス管理責任者が作成する個別支援計画を求めるのか、私には全くもって理解できないのです。個別支援計画を見たら、計画を作成する相談支援専門員の誰もがその計画内容に引っ張られるのは目に見えています。それでは、本人の希望にあった計画を冷静に作成することは不可能です。そうであるならば、事業所にサービス管理責任者がいれば問題無いわけで、それこそ「計画相談不要論」が、各事業所からでてくるひとつの理由です。私だって、事業所側からみていたら同じように考えるでしょう。個別支援計画を私たちが必要とするのは、私たちが作成したサービス等利用計画に則って、個別支援計画が作成されているのかの確認を行うためであって、個別支援計画ありきのサービス等利用計画は、本末転倒、あまりにも制度を理解していない証拠を自ら露呈しているようなものです。私たち3階ラボは、このようなことを事業所のスタッフさんに求めたことは1度もありませんし、こちらからもとめること自体がおかしな話であると考えています。


え?サービス利用等計画が、個別支援計画と同じ?

 以前、とある事業所の管理者からお問い合わせをいただきました。内容は、「突然、相談支援事業所から電話があって、個別支援計画の提出を求められ、その後、サービス等利用計画の内容をみたら、私たちが提出した個別支援計画と内容がまったく同じだったけど、これで良いのですか?」という問い合わせでした。サービス管理責任者と相談支援専門員が、お互いにアセスメントをとる中で、結果的に中身が同じになったということであれば、それはすばらしいことです。しかし、先述した通り、個別支援計画を事前に提出させておいて、そのままを書き写したサービス等利用計画であるならば、言うまでもありません。もはや、計画相談の体を成していません。ここまで読んでいただけたら、サービス等利用計画と個別支援計画が全く同じである事自体がおかしな話なわけです。言い換えれば、利用者さんやサービス管理責任者に対して失礼です。私が一番感じるのは、自分たちの職域を守っていく上でも、計画相談の趣旨に則り、きちんとやっていくことです(原点回帰)。確かに、目の前に「計画相談が導入されないと、サービスが利用できないと聞いて・・・。」と悲痛な声で利用者さんやそのご家族からご連絡をいただくこともたくさんあります。だから、とにかく「計画相談の導入を!」を旗印にして、「なんでもあり」がまかり通ってきています。反面、そんなことを続けていくことで、結果的に「計画相談不要論」が広がっていくのは、相談支援専門員である私たちがとってきた行動に対する評価です。言い訳はできません。したとしても、「制度がそうなっているから」としか言えないはずです。


丁寧なアセスメントは、ご本人の隠れたニーズを見出すことができます。

 障がい福祉サービスを利用する方全員に、計画相談が導入されることになった一つの理由は、まさにここにあると感じています。アセスメントをとっていく中で、人によって、知っている情報がそれぞれであるということを思い知らされます。自ら積極的に動く方でも、サービスの知識に偏りがあったり、自分から動かない(動くことができない)ことで、利用出来るサービスを知らなかったりと、本当にひとりひとりの状況によって対応が違ってくるのです。ですので、型にはめたまったく同じ対応ということはありません。例えば、自分が大変な思いをして苦労していることを、利用者さん本人が気づいていないケースもあります。また、利用出来るサービスの受給者証はあっても、提供してくれるサービス事業所を探しきれない方もいらっしゃいます。日本人特有の「サービス利用に対する遠慮」や「電話が苦手で利用したくでも探せない」など、情報弱者は実際にたくさんいるのです。また、すでにサービスを利用している方であっても、通所系の事業所と、居宅系の事業所と、医療機関がこれまで話し合いの場を持つことがほとんどなかったり、そのために、家庭内のことがまったくわからず、通所先では問題ないと思っていたけれど、自宅に行ったらとんでもない状況だった・・・そんな話はたくさんあるのです。だから、計画相談が必要なのです。あと、誤解を恐れずに言えば、事業所から提供されるサービスに対する不満があるのに、そのことを言えないケースもあります。そのことに気づくのも「アセスメント」です。利用している事業所のスタッフがいない場所でのアセスメントがあることで、本音を漏らす利用者さんも少なからずいます。後述しますが、私たちは、自分たちのグループ事業所のサービス等利用計画の作成やモニタリングを極力したくないのは、本当に意味で「権利擁護」にならないのではないかと考えているからです。

 話がそれてしまいましたが、アセスメントは、利用者さんのことを知り、これまで生きてきた中でのご苦労や困難に少しでも第三者である私たちが寄り添い、そのことで、少しでも前に進めるような計画を作成して、そして丁寧にその内容を説明することで、共感しあえることが相談支援専門員には必要なのだと思うのです。


アセスメントや調整の技術が相談支援専門員の技術のはず。

 3階ラボでも、処理のスピードを向上させていくことに対しては、努力を惜しみません。設立当初に比べたら、はるかにスピードアップを図っています。やろうと思えば、新規の計画作成も私ひとりで月30件以上は可能です。ただ、スピードアップを図るがあまり、利用者さんに不信感を与えるような説明や対応、アセスメントをないがしろにするようなことがあってはいけません。また、私たちには、サービス担当者会議の開催、モニタリング会議の開催、そしてそれらの調整が必要になりますので、これらのことを考えると、やはりできる人でも月25件程度が限界だと思います。もちろん、もっと可能という人もいれば、そんなに受けいれていては納得のいく支援はできないという人もいるでしょう。あくまで私がやっていく中での実感ですので個人差は生じます。ただ、私が言いたいのは、「これだけできますよ!」ということではなく、利用者さんが納得するかたちで、きちんと向き合って計画相談を進めているかということです。きちんと進めていれば、ここまで計画相談に対するクレームや不要論が出ることはなかったのではないでしょうか。仕事は早くできれば良いということではありません。遅かれ早かれ、計画相談は落ち着いてくるはずです。そのときには、スピードよりも調整や連携、サービス知識の豊富さ、普段からの事業所とのつながりなど、相談支援専門員に求められるものは、より深いものになっていくはずです。その時に、計画相談に対する不信感を抱える事業所とは、連携などスムーズにいくはずもありません。スピードと支援の質は、ともに求めていくべきであり、どちらかがないがしろになってはいけないということになります。ただ、これだけ必要性が逼迫している中で、ゆっくりとしか進めないのもどうかとも思いますので、やはり、周囲の空気を読む必要も求められるのかもしれません。


モニタリングをないがしろにしてはいけない。

 先日、とある事業所さんから、「うちの利用者さんは、3階ラボさんでおねがいできますか?」と相談がありました。全部と言われるとさすがに許容量から考えて難しいかもなぁなどと考えていたのですが、理由を尋ねると、「(サービス等利用)計画もそうなんですが、モニタリング報告書の内容が、あまりにひどくて・・・」とのこと。聞けば、「会議は20分くらい行われて、ご本人も状況などを話していたにも関わらず、ほとんどの項目が「特に問題なし」程度しか書いていない。確かに問題はない方だけど、あまりにも3階ラボさんからの報告書とちがうので・・・」と言われるのです。こちらとしても苦笑いするしかありませんが、自分たちがやったわけではないにもかかわらず、「本当にごめんなさいね」と思わず口にでてしまいました。福岡市では提出義務のないモニタリング報告書ではありますが(私たちは提出していますが)、筑紫地区では、提出が求められます。もちろん、提出する前には、ご本人に同意・ご署名を頂くことになります。同意を得るということは、確認を行っているということです。利用者やご家族のみなさん、事業所の方々は、どんな気持ちで確認されているのでしょうか。


原因は、計画案に問題があるのではないかと考えます。

 最初の方でもお話ししましたが、モニタリングを正確に、しかも容易に報告書を作成するために必要なのは、きちんとしたサービス等利用計画(案)を作成することが必要です。結果的に、利用者さんの希望を叶えるために必要な課題を明確にすることで、モニタリング報告書では、その部分を重点的に確認していくわけですから、項目がなければ、話が出た内容をだらだらと記載するか、それだと時間がかかってしまうので「特に問題なし」になってしまうのだと考えます。明確な問いがあれば、そのことについて明確に答えられるのですから、あらかじめ明確な目標・課題を設定してあげることは、絶対に必要なことだと私たちは考えるのです。
 モニタリング報告書は、問いに対して、ご本人や事業所さんがどのように答えているかを記載することが重要なので、できるだけ話した内容そのまま記載することが肝要です。いろいろと考えるよりそのままを書くことが、逆に求められているのではないかと思います。「大丈夫です。特にいまのところは問題ありません。仕事も順調です。」そう、書いておけば、本人が言ったと誰もがわかります。「特に問題なし」は、いろいろ話したのか、話していないのすらわからない配慮のない書き方と言われても仕方ないと思います。


最後は、人としての配慮の問題かもしれません。

 もはや、「人として」「福祉を担う人として」という話しになってしまうのではないでしょうか。どこまで、相手の立場に立ってすすめていけるのか、思いを寄せられるか、これは、福祉を担う人間として、私たちが常に問われていることだと思うのです。医療でも教育でもなく、福祉であるということ。よく介護と福祉は一緒にされますが、私個人としては、福祉であることが重要だと考えています。モニタリングだけに関わらず、丁寧な契約・アセスメント、しっかりとしたサービス等利用計画の作成、意義を理解したサービス担当者会議の開催、モニタリング会議の開催、目的のある報告書の作成など、すべての手続きに必要なのは、利用者さん及びご家族への配慮だと思うのです。それを忘れて進めてしまうことこそが、不信感やクレームを生み出していくのだと思います。最後にもう一度言います。時間を割いているのは、私たちではなくて、利用者さんでありご家族であり、事業所さんなのです。


計画相談は、もはや『ごっこ遊び』になりつつあります。

 私たち自身が真剣に取り組んでいる仕事を、自ら『ごっこ遊び』というのは、本当に情けない気持ちになってしまいます。私たち自身も、真剣に取り組んでいるつもりですが、気持ちのどこかに「計画相談を行う意味はあるのか?」との葛藤が生じたりすることもしばしばです。しかし、反面、私たちの関わりに対して、利用者さんやそのご家族に本当に感謝をしていただくことがあります。それは、葛藤とくらべれば圧倒的に少ない回数ですが、そこに救われている自分たちがいます。今の私たちは、正直に言えば制度に振り回されている状態です。ただただ、「事業所がみつからないので困っている」「3階ラボさんにしか頼めなくて」という声に必死に答え続けているだけです。毎日毎日、同じことの繰り返しの中で、1ヶ月先のスケジュールまでぎっしりと詰まっている状態。幸いにして、3階ラボは、補助員も入れて3名のスタッフがいますので、仕事の進め方や、計画の内容、困った時の対応など、何気に投げかけると、それぞれが意見を言ってくれたりしますので、私自身も愚痴を言ったり決断がしやすい状況といえるので助かっています。しかし、これをひとりでするとなると、きっと困ってしまうだろうな・・・と思います。たった4枚の書式ですが、このことが頭から離れることは1日もないのです。その日の仕事が終わらなければ。次の日に影響を及ぼすというプレッシャーで、休日も気になって忘れることはできないですし、ひどいときには夢にまででてくるのですから。


利益誘導、あらたな囲い込みにならないように。

 もし、私たちが母体法人から、計画相談を通して新規の利用者さんを誘導することを命じられたら、私は計画相談の担当をやめると思います。このような話をすると、周囲からは「綺麗事」と言われるかもしれませんが、これだけは私の信念として絶対に譲れません。このことは、どこでも口に出して言いますし、どこでも自信をもって言うようにしています。ただ、計画相談のことを本当に理解してくれているのは、私たちの母体法人でもあります。このことは、法人理事長を始めスタッフのみなさんに本当に感謝しています。私たちが、グループの事業所である、「ばんび(放課後等デイサービス)」や「フリースペースみなみ(就労移行支援・就労継続支援B型)を紹介する際は、あくまでアセスメントを通して利用者さんのニーズを確認する中で、たまたまニーズに当てはまるいくつかの事業所から選択する上でのひとつとしてご紹介することだけです。同じ法人内の利用者さんの計画相談を私たちが担当することに対しては、やはり周囲からの目も気になりますし、かなり気をつかってしまいます。私たちが、普段からそのように言われたり、そして勘違いをされないように行動していくことが求められます。これらは、私が他の3階ラボのスタッフに言わなくても、自分たちで動く中できちんと感じてくれているので、本当に感謝しています。だから、片手間で計画相談を考えているような発言をする事業所のスタッフさんをみると、気持ちを抑えられなくなるのも事実なのですが・・・。


計画相談は赤字でも黒字でも、このままでは危ない。

 私たちがどんなにがんばっても、事業そのものを黒字化するのは本当に難しいです。先日、計画相談専用のソフトウェアの営業に来られた人が一生懸命説明してくれましたが、単体事業が赤字であることを伝えると絶句されていました(笑)でも、黒字化事業になったら、利用者さんになにがメリットになるかと問われたら、今の現状をみていると、何もないようにも感じてしまいます。言い換えると、先述したような内容のサービス等利用計画(案)やモニタリング報告書を作成して13000円〜16000円もらえるなら、それもまた高いかもと感じられても仕方ないようにも思います。こんな状況を続けていたら、計画相談不要論はこれからも大きくなり続けるでしょう。そうなった時は、制度崩壊しかありません。私は心配性かもしれませんが、真面目にやっている人ほど、現状を憂い、気持ちがはなれてしまい、辞めていく相談支援専門員も増えてくるはずです。ますます、計画相談の状況は、悪化の一途をたどるでしょう。きちんと向き合わない計画相談を続けることは、自分たちの評判を落とし、自分たちの仕事を他者から否定され、自分たちの能力のある仲間を失い、最終的に自分たちの職域を崩壊させていくことなのです。本当に、計画相談の未来は決して明るいとは言えないのです。


連携を抜きにして、計画相談は成立しません。

 特定相談支援事業ですので、障がいを抱えた方のよろず相談を行う事業所と一緒に考えてはいけません(委託相談支援事業所ではありません)。そこを同じにすることは、周囲を混乱させるだけです。ただ、少なくとも3階ラボと契約している利用者さんの相談は、きちんと受けてあげなければいけません。ただ、現状は、新規の計画相談を受け入れ、サービス担当者会議やモニタリング会議を開催して、報告書等を作成することで手一杯なのです。時期的なものもあり、日によっては、相談の電話が鳴りっぱなしになります。ひとつひとつ私たちの手で対応してあげたいのですが、正直、そんな時間はどこにもありません。そういうときにこそ、相談支援専門員としてやらなければならないのが、関係機関との連携です。最近、連携という意味をよく理解していない相談支援専門員さんを見かけます。それは、利用者さんにとっても、事業者さんにとっても、不幸だと思います。


利用者さんのために、関係機関との連携を図りましょう。

 例えば、私たちが契約している利用者さんから相談を受けたとします。ただ、多忙な中、私たち相談支援専門員が一緒に動いてあげることは、時間的制限が生じてしまうことは、往往にしてあります。そんな時に、利用者さんがいつも利用しているサービス事業所さんに相談内容を伝えることを、事前にきちんと合意して事業所さんにお伝えすれば、事業所さんよりフォローをしていただくことが可能になるかもしれません。そうなれば、解決もスピードアップできますし、利用者さんは様々な意見を聞くことも可能となります。場合によっては、想像以上に良い形で終えることが可能となるかもしれません。そうやって、時間がなくても相談支援専門員が相談内容から機転をきかし、いろんな関係機関と情報を共有して連携を図ることで、相談支援専門員も業務の負担を減らせますし、ご本人も問題に対して早く取り組み、解決に向かうことができるので、支援に対する満足度もあがるでしょう。そうやって誰もが連携を図ることで、ぞれぞれの強みを生かした支援を行うことを可能とするのが「連携」なのです。連携をするためには、いろいろなサービス事業所さんとの普段からの顔の見えるお付き合いが必要となります。やはり、知っている人からの依頼は、100%以上の力になってあげたいと思うものです。逆に、突然電話してきて協力を依頼されても、最初から何でもというわけには、人間である以上できないものです。私たちが受託している大切な利用者さんを、よりよい支援を受けてもらうためにも、私たち相談支援専門員が信頼されるお付き合いをすることが求められます。逆に、連携ができない相談支援専門員に利用者さんが当たった場合は、その利用者さんにとっては不幸となってしまいますね。


困った時はお互い様です。

 相談支援事業所同士の連携が図れていないことも問題です。3階ラボは常にオープンにしているつもりですが、なかなか同じ特定相談支援事業所さんとは情報の共有ができていません。それは自らが多忙だからなのか、相手も忙しいとわかっているから気が引けるからなのか、自分の進め方を知られたくないからなのかは全くわかりませんが、なかなか情報共有ができていません。他の事業所さんがどんなやりかたで進めているのか、私たちは本当に知らないですしわからないのです。ただ、福祉課に書類を提出する際や、利用者さんを通じて知り合った事業所さんからの話の中で、3階ラボをご指名頂くことが実際に増えています。私たちとしてもご指名いいただける立場にいれることに対しては大変ありがたいのですが、同時に、他ではどのようなやり方が行われているのか知りたいですし、可能であればやり方そのものを共有することで、4市1町のどこの特定相談支援事業所を利用しても、きちんと対応してもらえる環境を作っていくべきだと思えます。そのため、3階ラボで利用している書式をホームページ上でオープンにしました。おそらく批評されるだろうと、相当の覚悟の上で行っています。アセスメントの甘さを指摘されるかもしれませんし、不備を指摘されるかもしれません。しかし、私たち自身が動いていかなければ、計画相談の技術が向上していきませんし、そうしないことの方がよっぽど問題だと思うのです。3階ラボの「ラボ」はラボラトリーの略で、意味は「研究所」「研究室」という意味です。私たちは、計画相談のあるべき姿、意義を十分理解し、可能な限りその意義や目的に向かって、技術の向上を図っていきたいと思います。これからも発信していきますので、皆様からのご指導をお願いしたいところです。


3階ラボが考える計画相談の意義・目的

 私たち3階ラボが、普段、計画相談の業務に携わる中で感じる、計画相談の意義・目的を一覧にしてみました。それが以下のとおりです。
①サービスの利用を希望し、サービス等利用計画作成に伴う丁寧なアセスメントを行うことで、利用者さんの隠れたニーズに気づくことができる。
②利用者さんのニーズに寄り添いながら、最適なサービス利用を一緒に考えていくことができる(サービス利用を増やしていくばかりではない)。また、サービスや地域資源に関する個々人の情報格差をなくすことができる。
③第三者の立場で、サービスがきちんと行われているのか、利用に対して満足できているのかどうかなど、ご本人の権利擁護を行なっていく。必要に応じて、事業者と利用者の間に入り、お互いが納得出来る関係性の構築を行う(利用者さん側からの明らかな無理・難題に対しては、場合によっては事業所側の立場からの発言も行う)。
④身近に気軽に相談できる人を、福祉サービスの利用を通して持つことができる。また、必要に応じて他の支援機関や関係機関との連携を図り、ご本人のニーズに合わせたサポート体制を構築することができる。(よって、サービス提供事業所の都合に合わせた支援や、利益誘導、抱え込みなどを防ぐことができる。)
⑤利用者さんを通じて、その事業所でどのようなサービスが行われているかを理解したり、第三者を積極的に受け入れる懐の深さをもった事業所であるかを知ることで、利用者さんのニーズ、事業所のニーズ、双方のニーズに的確に合わせた紹介を行うことができ、サービスに対する満足度をあげることができる。
⑥複数のサービス事業所との間に入り、お互いの情報共有・連携を図ることで、サービス事業所が、対象の利用者さんに対してより具体的なサービス提供を可能となる。また、トラブル発生などによりサービス利用の中断した場合でも、その後も一緒に支援することができる。


これから、特定相談支援事業所に求められるもの。

 今、私たちが求められていることについて考えてみました。
①特定相談支援事業所としての本来の目的を理解し、そのことに対して真摯にサービスの提供を行なっていく必要がある。間違っても、「なんでも相談を受けいれます」「就労支援を行います」など、本来の制度にはない話はしないようにしなくてはいけない。(周囲の事業所が迷惑を被ることがある。)
②ひとつひとつ丁寧にすすめていくことが大切。安易な道を選べば、計画相談全体に対する不信感やクレームにつながり、周囲の事業所に迷惑が生じるだけではなく、結果的に自分たちの職域を脅かすことになる。
③効率と利用者さんの満足度という、相反するものを同時に求めていく必要がある。時間をかければ良いというわけでもないし、急げば良いというわけでもない。相談支援専門員個々人の能力に応じて、不信感を生じさせない程度で可能な限り早く行っていくように、誰もが努力していく。待っている利用者さんは、まだまだたくさんいることを肝に銘じなければいけない。
④計画相談のために、利用者及び家族、事業者が時間を割いてくれていることを理解しなくてはいけない。そして、相手に対して感謝の気持ちをもって進めていくことが大切。決して、特定相談支援事業所が時間を割いているのではない。特定相談支援事業所が「制度上、必要」という言葉をつかうことには慎重にしなくてはいけない。


さいごに。

 今、3階ラボには、200件以上の利用者さんのファイルが存在しています。ふと、考えることがあります。私がここを離れたら、誰がこのファイルを引き継いてくれるのだろうかと。このペースですすんでいくと、今年の年末までには300件を超えてしまいます。私たちは、どこまでこれらを受け入れていけばよいのか、本当にわからないのです。そして、何より私たち自身が、いつまで3階ラボにいるかもわからないのです。そんな中、これだけのファイルを抱えることは、大きなプレッシャーであり、恐怖すら感じるのです。そして、私たちは毎日毎日、計画の書式を見ない日はありません。同じことの繰り返しで時々、鬱々とします。さらには、毎日毎日、初めてお会いする利用者さんを訪問しているのです。どのように説明して、どのように受け入れてもらうのか、実際にいってお会いしてみないとわかりませんので、毎回、緊張と相手の言動や動きに神経を尖らせています。今後、私たちはどのようになっていくのか、制度がこのまま続いていくのか、私たち自身のいく末もわからないのです。そもそもこの文章も、誰に向かって書いているのかすらわかりません(苦笑)。誰かに知ってほしいというわけでもなく、誰かに特定して書いているわけでもなく、そもそも、書いたところでどうなるということでしょう。

そんな現状である特定相談支援事業所に対して、事業所の皆様におかれましても、できれば温かく見守っていただけたらと思います。

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