一般社団法人 福岡・筑紫地区地域福祉支援協会の設立にあたり

一般社団法人 福岡・筑紫地区地域福祉支援協会の設立にあたり


私が那珂川町(現在の那珂川市)で業務をスタートしたのが、平成26年2月のこと。もちろん、計画相談という新しい事業を通じて、私ははじめてこの地域を知り、社会資源を知りました。今は「計画相談支援室 ノーマ」に移り、計画相談をこの地域ではじめて合計5年の歳月を迎えることとなりました。これまで大変お世話になった那珂川市・春日市にお住いの利用者さん並びに保護者の皆様、行政関係、関係機関の皆様との関わりを通して、数多くのことを学ぶ機会を頂いたことに感謝しながら、これまで業務を通して考えてきた「想い」を胸に、今年、あらたな試みを始めることを決意しました。

計画相談を通して、地域には様々な「社会資源」そして「地域課題」があることを知りました。その課題に立ち向かう「団体や組織」の存在も知りました。同時に、障害福祉サービスは、サービスを利用する利用者さんのために存在するものですが、実際は、法人や事業所都合で多くの中堅職員やベテラン職員がこの地区を離れていく現状も何度も目にしました。新しい事業所が立ち上がっても、未熟な支援の結果、そこから解(ほつ)れていく利用者さんもたくさん目にしてきました。地域ニーズは数多くあるのに、そこを担う社会資源が乏しく、実際に解決できない課題もたくさんありました。グレーゾーンと呼ばれる状況を支えるサービスがなくて、大変苦労している方もいましたが、そういった数多くの課題を抱える現状をたくさん知りながら、何一つ解決できない「私」もいました。

計画相談という業務は、最初にその課題に直面するケースも多いため、時に厳しい側面もあります。利用者さんに半年に1回、3ヶ月に1回という頻度で向き合うからこそ、自分たちの存在意義や価値をどこに据えて、モチベーションを維持していくかが、私たちにとって大きな課題となります。新たに計画相談を始める方も増えてきましたが、そこを考えていかないと、計画相談としての業務は苦しくなるばかりだと思っています。そういったことを私は常に考えてきたからこそ、「筑紫地区障がい福祉事業所研究会(通称:原点回帰の会)」「福岡筑紫地区計画相談支援研究会(通称:チキンの会)」などの様々な試みを仲間とともに行なってきました。

そのような試みは、開始当初は盛り上がるものですが、実際に続けていくことは難しいものです。そういった中で、家族会や親の会といった団体の皆様は、そのような課題を乗り越えて継続されています。その背景には、やはり「生きづらさを抱えた我が子、家族」という存在が常にあり、「生活」があり、その「想い」があるからだと思います。逆に、そういった方々を支える私たちは、結果的に「法人都合」「自己都合」ですべてを終わらせてしまいます。そんな現状を見て見ぬふりをしているのも私たち支援者です。そういった状況に、私自身も不甲斐なさを感じますし、私たちの明るい未来を描くことも難しく感じてしまいます。

福祉業界は、想いをもって入ってくる方も多くいますが、実際には、そうでない方々も数多くいます。日本は、未曾有の人手不足と言われていますが、その中でも、福祉業界はずば抜けて人手不足です。「人であれば誰も良い」という言い方は大変失礼な言い方ですが、「とにかく」「とりあえず」が横行している、実際には、そんな状況も見てとれます。その結果が、どのような悲劇を生み出したかは、いうまでもありません。でも、私たちのいる業界は、そんなに夢を描けない業界なのでしょうか?チキンの会は、私が計画相談を行う相談支援専門員向けに気軽に悩みが相談できる場として昨年より始めました。すでに次回で7回目となりますが、最初は5名程度から始めたこの会も、今や25名以上が集まる研究会となりました。もしかしたら、誰もがそのような場を求めているのではないかと今では考えています。

でも、こうやって始めたものでも、私たちの福祉に対する「想い」はどこまで続くのでしょうか。最初は盛り上がりながらも、徐々に落ち込んでいくのがやはり常なのでしょうか。私は、そこにジレンマを感じています。私には、福祉全体を変える力はありません。福岡の福祉を変える力もありません。しかし、この地区で働く仲間とともにであれば、せめて自分たちの関わりのある地域は、保護者や家族ではない「支援者」の立場からでも、問題定義や行動することで変えられないだろうか?と感じているのです。であるならば、私が所属するノーマではない、より公正で中立を保てる組織で行う方が、より具体的で責任ある活動ができるのではないかと考えました。

「福祉は制度ではなく、想いからはじまる。それは、当事者や家族だけではなく、私たち支援者であっても」

綺麗事のように聞こえますが、私たちが綺麗事を言わなければ誰がいうのでしょうか。私たち支援者が「基本的人権」を謳わなければ、誰が謳うのでしょうか。その綺麗事を真剣に考えて行動できる組織を作り、仲間とともに地域の福祉を良いものにしていきたい。そのような思いを込めて、「地域福祉」を支える一般社団法人の設立を行うことを決めました。

いつのまにか、この地で計画相談を始めて5年が経過しました。一時は、私一人で220名の利用者さんと歩んできましたが、今は160名前後となっています。もちろん、それでも数は多いですが、私のなかで、この5年で私は仕事で何を地域に残してきたのだろうか?という思いが頭の中を巡るようになりました。私は、自ら計画相談をしたくて始めたわけではありません。たまたま当時の法人が、私に計画相談を行うことを任したことで、縁あって担うこととなり、今では、地域でも一番長くやっている人間のひとりとなりました。そんな私も、5年を経過するなかで自問自答する機会が増えました。それは、私が「何のために」この仕事をやっているのか?という問いです。私のこの仕事の役割や、この仕事にかける想いや目的・意義とは何なのか?単に私と私の家族を養うだけのためにやっているのか?そうでないのであれば、一体なんなのか?

個人的なことで、皆様からみれば「何を熱くなっているのか?」と笑われそうですが、少なくとも今の私は、真剣に「何のために」という答えを求めて、40代半ばにして苦悶しているのです。国家資格を取得して、かれこれ15年近く福祉業界に携わっていますが、私は常に迷っています。当たり前に対して、常にこれで良いのか?ここまでで良いのか?やりすぎていないか?近すぎはしないか?といったことを、常に自分に問うているのです。周囲には、いつも「これで良かったのか?」を尋ねるようにしています。事務員にも、同僚にも、そして法人代表にも。私も失敗は怖いです。でも、いつも失敗だらけです。私がそんな話をすれば、ほっとする相談員もいるとか。でも、本当に失敗だらけです。一度の失敗で、すべてが離れていくこともしばしばです。仕方ないですが、リアルな現実です。でも、すべては、自分を認めることからはじまるのだと私は信じています。制度や施策、ルールを押し付けあることが、私たちの仕事ではありません。時には、支援者同士でも押し付けあっています。そんなことに全く意味などありません。私たちは、連帯・連携が必要なのです。

私たちは、リアルな連帯・連携を行う場をつくります。そして、その情報を地域に伝える場をつくります。地域課題に対して、真摯に向き合い、その一部でも担える社会資源になります。研修、講演会を開催することで、地域の支援者の支援技術向上に寄与します。そのことで、地域福祉の向上を図ります。福祉で働く職員の想いを支える活動も行います。誰もが、この地区から離れないで良いようなサポートをしていきます。最後に、私たち支援者の視点で、行政との折衝を行ったり、協力して社会資源を開発できるような組織になれればと思っています。すべては、私たちのいる地域のために。

皆様のご支援ご協力を賜ります様よろしくお願いいたします。

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