《日々雑感》訓練と配慮のバランスの難しさ。

とある事業所さんから、事業所と保護者との考え方の相違についての相談があり、私自身も少し考えている日々が続いています。

障害福祉サービスには、「介護等給付」「訓練等給付」という2つの種類があります。
例えば介護等給付は、ご存知のように居宅介護(身体介護/家事援助)というヘルパーさんのサービスがあります。また、通所系のサービスで言えば、生活介護というものがあります。

「介護等給付」というのは、イメージ通り介護や介助を必要とする支援が求められますので、みなさんにもイメージしやすいのではないかと思います。

「訓練等給付」には、就労継続支援A/B型、就労移行支援、自立訓練などがあります。訓練等給付は、どちらかというと訓練を行うことで就職を目指したり、自分でできることを増やしていき、就職に向けてや地域社会に適応しながら生活していく力をつけていくための支援ということになります。

実際に障害者総合支援法にも、就労系のサービスには以下のような記載があります。

《就労継続支援B型》
通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、 就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う。

《就労継続支援A型》通常の事業所に雇用されることが困難であり、 雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、 雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等の支援を行う。

《就労移行支援》就労を希望する65歳未満の障害者で、 通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者に対して、①生産活動、職場体験等の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、②求職活動に関する支援、③その適性に応じた職場の開拓、④就職後における職場への定着のために必要な相談等の支援を行う。上記の理由においても、支援を行う事業所においては、自立に向けた支援という視点が必要となります。

その上で、合理的配慮は必要となりますし、本人の障害特性を見極めながら対応を行なっていく必要があります。

計画相談としても、事業所の支援状況については、モニタリングなどを通して確認しうるように心がけておりますが、事業所さんによっていろんな得意があったり、良さがあるので、その場その場で一概に良い悪いは言えません。

しかし、学齢期のサービスである、放課後等デイサービスが増えてきたせいもあるのかもしれませんが、とある就労支援事業所の代表は、「我が子の対応を先回りする保護者が増えた」と嘆いてあり、私個人でも、その類の声をよく耳にするようになりました。

「うちの子は、◯◯が苦手で」「うちの子は、◯◯をするときは、こうするとうまくできます」といったような内容をお伝えいただくことは良いのですが、事業所も意図した目的があっての訓練を行なっているのに対しての「対応のクレーム」としていろんな依頼をしてくるようになったし、その内容も、就労系の事業所に求めるには理不尽とも思えるような内容だ・・・と話していました。

ひどい時は、事業所の対応に対して、あからさまに悪評をばらまくといった人もいるとのことで、スタッフもその利用者の支援に萎縮しているとの話でした。そのため、保護者の対応をするために、顧問弁護士に相談したり、逆に、事業所から行政や公的機関に相談したりすることもあるとのこと。

しかし、ここで本当に考えていかないといけないことは、事業所とご家族が本当に共有しなければならないのは、なんのために「就労支援事業所」に通所を行なっているかという点です。

就労支援事業所を利用する方は、地域の中にはかなり多くの方々がいます。生活リズムの安定や体調の安定のために月1回程度の利用からはじめている方から、就職に向けて毎日取り組みんでいる方まで、とにかく幅広く利用しやすいのが就労支援事業所の良さでもあります。

生活リズムの安定や体調の安定を図るのであれば、より支援が行き届く生活介護でもよければ、生活訓練でも問題ない中で、なぜ、就労支援事業所を利用するのか?それは、「はたらく」ということがひとつのキーワードになっていると思うのです。

人は、「はたらく」という目的があるからこそ、モチベーションを維持している方がいます。「少しでも稼ぎたい」「少しでも仕事がしたい」「仕事だったら外に出てもいい」といった思いに寄り添う形で利用される方もいます。

逆に言うと、そこが曖昧になると、その方の希望にそうことができないもの就労支援事業所なのです。

事業所としても、仕事だからこそ、仕事をする責任を感じて欲しいと、時に厳しく接して伝えることも行いますし、そうやって社会性の獲得や社会のルールを学ぶことで、本人が地域で生きやすくなってほしいという願いもあります。

もちろん、事業所の話しばかりを聞くわけにはいきません。中には、「はい?」というような考えの支援者がいたり、支援と言う名の虐待行為がみられる事業所もあります。だからこそ、第三者の立場で介入する計画相談に意味があると感じているのです。

ただ、「はたらく」ことが楽しいことは良いことであっても、楽で安易な方向にいくことは、誰も救われないのではないかと思います。企業は、利益があって雇用ができます。仕事をしてもらえるからこそ、利益を生み、雇用を継続していけるのです。

企業のなかには、その人の特性をうまく生かして、ご本人にしかできない仕事を生み出すこともあります。本人に適した、すばらしい仕事を準備していただくこともあるでしょう。しかし、毎日通い、意思を伝えることができ、集中力があり、清潔感があり、元気で、笑顔で、毎日を職場で過ごすためには、時に訓練も必要となります。

「こうしてほしい」「こうすればできる」という思いも大切にしなければいけませんが、社会に受け入れてもらうためには、乗り越えて欲しい課題もたくさんあると思いますし、だからこそ「就労支援事業所」を含む様々なサービスがあるのだと思うのです

今が、このサービスを利用するタイミングでないのであれば、サービスそのものを変えてあげることも必要になるかもしれません。そのために、そういった知識も早い段階から、本人や保護者に伝えていく必要があると思うのです。そのためには、計画相談の相談支援専門員も就労支援を含むサービスの知識が必要であり、マッチングする調整力が求められると思います。

対応の良し悪しではなく、「何のために就労支援事業所に通っているのか?」「何のために、この事業所を選んだのか?」「そもそも誰が選んだのか?」

本人や保護者が「(退職した、異動した)あの人がいたからよかったのに」「あの対応は間違っている」「あそこは悪い事業所だ」という話をする前に、事業所ときちんと話をしたのか?計画相談に話をしたのか?計画相談も保護者もしくは事業所だけの話しを鵜呑みにしていないか?事業所の良い面を把握できているのか?そういった中から、お互いがWIN-WINになる調整する力も必要となるのかもしれません。

計画相談の役割は大きく、意味があるということを相談支援専門員も認識していただきたい。

ということで、そんな話もしてみたい『計画相談支援事業所のきほんの「き」』の研修を4月30日に行います。6時間ぶっ通し、レジュメは約140枚、ノーマ寺川がひとりで取り組むという前代未聞の研修を行います。

ひとつお願いがあります。すでに20名を超える相談支援専門員にご参加頂いています。私は、かつては委託相談支援事業所に3年半ほどいましたが、今は純粋に6年目に入った計画相談の相談支援専門員です。私も、人に伝えるということに真剣に取り組んでいます。やるからには、真剣に行います。採算は度外視。私の集大成でもあります。

就労支援同様に、計画相談として生き残るための力を私たちもつけていく必要があります。受ける側も覚悟をもってお越しください。中途半端な知識と中途半端な対応をする相談員を育成するつもりはありません。これから先は、「何のために研修を受けるのか?」という点を重視していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

追伸 これからも難しい、神経質にならざるを得ない内容でも、臆さず書いていきたいと思います!

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