《2021年新年号》ノーマ通信
みなさま、あけましておめでとうございます!
本年もノーマをどうぞよろしくお願いいたします!
さて、2020年は、私にとっても、みなさんにとっても激動の1年だったと思います。
新型コロナウイルスの感染拡大からはじまった2020年
昨年の今頃、誰が「新型コロナウイルス」の感染拡大に伴う様々な制限を予想したでしょうか?人生ではじめての「世界的パンデミック」のために、誰もが不安や恐怖を感じたことと思います。ましてや、当事者となった方も少なからずいらっしゃるのかもしれません。そして、そういった不安や恐怖が紛れもなく地域を包み込み、ネット上では、罹患した方を特定して攻撃したり、差別を行ったりする事件もかなりニュースになっていましたね。それは、ウイルスという見えない存在が引き起こす人々の不安や恐怖が増大したときに、人は簡単に他人を攻撃するという人間の、そして社会の弱さを露呈することとなったのだと思います。東日本大震災を機に、多くの人々は「連携」「連帯」を叫ぶようになりました。しかし、あれから年月が経過し、今度は「新型コロナウイルス」が、確実に「連携」や「連帯」を打ち壊す結果となりました。人は、3密を避けてソーシャルディスタンス(社会的距離)をとる必要にもなりましたし、コロナを理由に集団での活動も大幅に自粛することになりました。人は繋がることを求める生き物ですが、その繋がりを結ぶことが困難となった今、多くの人々は「孤立」し、「孤独感」に苛まれています。2020年は、戦後直後を生き抜いた人々の多くが経験したと思われる「それまでの価値観」が否定され、「新しい価値観」を受け入れざるをえない状況と同様に、現代に生きる私たちは、まさに「新しい生活様式」を受け入れる必要に迫られることになりました。それは、生き方そのものを変え、働き方そのものを変えることを私たちに求めました。産業によっては、大幅な縮小や変更・廃止を余儀なくされ、先日も、若い女性の自殺率が大幅に増えているとの内容がニュースとなりました。雇用の調整弁としての契約社員や派遣社員は、あっという間に職を失い、ホームレス化、貧困化しています。私たちの生活する地域社会は、どんどん不安定な方向に進んでいます。台風による水害なども含めて、まさに2020年は、私たちにとって不安要素の多い1年だったのではないでしょうか?
不安と恐怖、アイデンティティの揺らぎ
私たち、障がい福祉の分野も、コロナの影響を大きく受けた1年でした。日本中がコロナの影響を受け「緊急事態宣言」が出され、学校も臨時休校となり、仕事においてはリモートワークが叫ばれるようになるなかで、逆に私たち障がい福祉サービスの現場では、職員の感染に対する不安を他所に「休むことなく」多くの利用者を受け入れる日々でした。また、新型コロナウイルスの感染に対する不安のために、特に就労支援や生活介護等の現場では、軒並み利用者が通所を自粛する現象も見られ、「経営の行き詰まり」の不安に苛まれる福祉事業所も数多く存在しました。その結果、急遽、厚生労働省から「在宅支援」が導入されることになり、多くの事業所が救われることになりましたが、反面、在宅支援、リモート支援を行うなかで、多くのスタッフは、「業界全体を含む自分自身の存在意義」「アイデンティティーを揺らぎ」に繋がり、精神的にも疲弊した支援者も多かったように思います。私たち計画相談も、訪問できない中で、電話や文章によるやりとりによるモニタリングが推奨されましたが、その時はじめて、「自分たちの存在意義」「存在価値」を考えるきっかけとなりました。「計画相談とは何が?」「相談支援とは何か?」そういった漠然とした疑問を抱えながら、自宅待機状態でモニタリングを行っていたことを、私は今でも鮮明に思い出すことができます。このまま自宅で仕事をすることは困難だと感じた私は、コロナの影響が色濃くある時期でも、毎日、事務所に出勤して仕事をしました。訪問はできませんが、可能な限り「顔の見えるやりとり」を目指して、LINEをつかったテレビ電話などによるモニタリングを行いました。また、文章によるやりとりにおいては、フォームを使った報告なども可能にして、スマートフォンなどからもモニタリング報告ができるようにしました。コロナの影響に終わりの見えない現在、今こそICTを推し進めていく重要性を感じ、私たち法人も事業所全体で推し進めています。まさに、これまでの当たり前が当たり前ではなくなった瞬間を、2020年は生きたのだと思います。
だからこそ、「連携」「連帯」
いろんなことがあった2020年ですが、それでもまた、私たちはその世界を生きていかないといけません。そして、コロナの影響があっても、私たちは「連携」「連帯」して生きていくのです。いや、むしろ誰もがそうしたいと願っているのだと思います。障がい福祉の分野で生きていく私たちは、「人とのつながり」が支援の中心であることを知っています。地域で生きていくためには、地域の繋がりが必要となるのです。であるならば「コロナだから」を理由に掲げて、安易に周囲を拒絶して進んでいくわけにはいかないのです。私たちは、このような社会だからこそ繋がっていきます。2021年私たちのテーマは、『さらなる「連携」「連帯」』です。
計画相談を通して見えてくる「地域課題」
私が業務を担当する那珂川市と春日市は、比較的歴史の浅い、新しい事業所が中心となって地域の福祉を担っています。そこで働くスタッフの多くは、障害福祉に関する知識や経験も浅く、運営や経営に至っては、どこかの事業所の見様見真似な状態であり、また、コンサルタントやフランチャイズといった大手の関わりがある事業所であっても、やはり地域の実情や地域の特性についてまでカバーしてくれるところは少ないと感じています。特に、現場の支援者への教育を担う環境は乏しく、学びの場や交流の場は整備されていません。ノーマでは、計画相談を通して出会う事業所に対して、望まれる方には「運営支援サービス」を提供しています。それは、私たちの事業を潤すためのものではなく、私の伝える情報やアドバイスに対して責任を持つ意味を込めて行っています。契約した事業所に対しては、「法令遵守」と「将来を予測した運営」を行うための情報提供を中心に、様々な面からアドバイスをさせていただいています。しかし、月1回の訪問支援などでカバーできることは限られていますし、特に課題はわかっていても、その課題にに対して実際のアプローチができるまでには、時間の関係上、到底できることではありませんでした。また、計画相談を通して私たちが感じることは、どの事業所も職員の育成に悩んでいるという現実でした。そのためには、中堅からベテランの方々の力が必要となるのですが、実際には、中小の事業所によっては、そういったクラスの支援者がいないこともありますし、この地域にそういった方々から学べる環境というのは少ないものでした。また、横の繋がりについての課題は、どの事業所も抱えているのですが、そういった繋がりをつくるためのアクションは、業務に追われてできていない状況でした。計画相談が行うモニタリングなどを通じた繋がりはあっても、実際に顔の見える連携までには至っていないことは明白です。まさに、これこそが地域の抱える課題であり、今後、地域福祉を担う上でも大きな問題になると感じています。
ソーシャルアクションとしての有志による「学びの場」の提供
その課題に対して、地域の相談支援の最前線である計画相談として何ができるのかということを地域で働く仲間たちとともにつくりあげたのが、「一般社団法人 福岡・筑紫地区地域福祉支援協会」でした。平成31年2月に設立し、地域の福祉事業所に勤務する職員のための「連携」及び「学びの場」の提供を行い、2020年1月末で丸1年を迎えることになりました。現在では、4つの分野の勉強会を開催しており、筑紫地区のみならず、これまでも福岡市、糟屋地区、久留米市、北九州市の方までお越しいただくことになりました。2月には、1周年特別記念講演として、講演家である中村文昭さんをお呼びして、「何のために」をテーマに講演を行い、コロナ禍であり、もう少し遅くなれば開催不可能といった状況の中、たくさんの方々にお越しいただき大好評を得ることができました。その際には、多くのボランティアとして会員の皆さんにご参加いただき、当時、かなりの品薄だったマスクを配布し、入り口では全員に手指消毒のアルコールを行い、完璧なまでの感染予防を行うことができました。無事に終えることができたのは、そういったボランティアスタッフのおかげであり、まさに、「何のために」を行動に移すことができた結果だったからだと感じます。これら一般社団法人の活動を通じて、私たちは法人や事業所の垣根を超えて繋がることができたのと同時に、多くの方々と繋がるきっかけを得ることができました。計画相談として働く私にとって、その周辺地区にその人となりを知る相談支援専門員がいることは、利用者を次の地区につなぐ上でも重要な存在です。例えば、利用者さんの転居先にも仲間の計画相談がいることは、これ以上の安心感はないですし、その地区の情報も詳細に教えてもらえることができます。これこそが『ソーシャルワーク』であり、「連携」「連帯」の意味なのだと思います。
ソーシャルワーカーとして、相談支援の質の確保を
計画相談支援室 ノーマもまた、2021年1月末で丸3年を迎えることになります。那珂川市で設立して、那珂川市と春日市を限定して運営を行っているのも、「那珂川市と春日市については、ノーマに尋ねると良いよ」と思ってもらえる事業所を目指すと同時に、地域福祉の一端を担う上で、地域に根ざしてサービスを提供する意義を考えたからです。現在の私の考えは、「福祉はまちづくり」ということです。より、地域に根ざした支援体制を図ることは、私にとっても重要な要素だと感じています。と同時に、これからの世代を担う相談支援専門員を育成していくことが、私にとっての責務であり、地域の相談支援の質の向上を図ることも、私たち事業所に与えられた義務だと感じています。その背景には、私自身のベースが『ソーシャルワーカー』ということもあり、地域の課題を計画相談として感じながら、その課題に対して何もしないという選択肢はないと思いますし、自分の力でできないのであれば、私はこの地域の課題を発信していかないといけないのではないかと思っています。まさに、ソーシャルアクションの必要性です。計画相談を長くやっていると、計画相談が計画相談のままでいて良いはずもありません。地域の情報、利用者のニーズ、社会資源の不足(フォーマル・インフォーマルに関わらず)、そういった計画相談に見えてくる様々な課題を理解しながら、その課題に対して私たちが地域に対して行動する、そして、様々な情報を基に、地域の相談支援体制のさらなる充実を図る、そのために何ができるか?そこまで考えていくことが求められます。
地域のために、私たちはこれからも変化し続けます
この度、2021年1月末をもって、計画相談支援室 ノーマよりひとりの相談支援専門員が卒業することになりました。2018年8月より、私たちノーマの一員となり、あっという間に実績を積み上げ、今では、ノーマだけではなく周辺の事業所や行政からも期待される相談支援専門員となりました。看護師として、ソーシャルワーカーとして、私以上に経験やノウハウを持っていることもあり、彼が次なるステップに進むことを誰も止めることはできません。同時に、私たちと同じ地域に根ざして、共に地域の相談支援体制の一端を担ってくれることと期待しています。また、2020年12月には、卒業する相談員と同姓の若い男性相談支援専門員が、私たちの一員に加入しました。現在、私と同行研修を行っており、行政や事業所への挨拶回りも含めてお邪魔させていただいています。2020年2月頃にはデビューできるように努めて参りますので、まだまだ行き届かない点もあるとは思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
私たちは、これからも地域に根ざした計画相談を行っていきたいと思っています。そして、周辺の計画相談支援事業所や障がい福祉サービス事業所、児童通所支援事業所と連携を図りながら、地域の課題に協力して取り組んでいきたいと思っています。そのためには、皆様のご協力が不可欠です。本年も、皆様からのご協力の程よろしくお願いいたします。
計画相談支援室 ノーマ
管理者 寺川
共に歩んで参りましょう
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