選ばれる計画相談支援事業所となるために

平成262月、計画相談支援事業所を運営するにあたり、私が運営法人に求めたふたつの「運営理念」があります。それは、今でも私の精神的支柱であり、ぶれない運営哲学となっているのです。それは、ひとつが愚直なまでの「公正中立」、そして「権利擁護」。かのスティーブ・ジョブスがいうのであれば、“Stay fair. Stay humble.”(公正を保て、謙虚であり続けよ)でしょうか?福祉業界で求められることは、技術や経験なのかもしれませんが、私は、それ以上に計画相談という事業運営を行う上でぶれることのない「精神的支柱」を自らに課すことを選択しました。その精神的支柱をベースに法人と話し合いを重ね、獲得したことが、以下のことです。

「同法人内の利用者に関しては、法人または事業所側から計画相談への一切の誘導をしない」(※1)(※2)

このことが、この地域でいち計画相談支援事業所がどれだけの信頼を勝ち得ることになったのかをみなさんはご存知でしょうか?それは、利用者ではなく、紛れもない行政や地域の事業所の信頼を勝ち得たことが大きいのです。どこにも所属しない単独事業所は、わざわざ考える必要はないかもしれません。しかし、圧倒的に多いであろう「福祉サービス事業を展開している運営法人」からすると、「何をいっているのか?」と思われるかもしれないなかで、そのことがどれだけのリスクマネジメントにつながるかを考えたことがあるでしょうか?自分たちの所属する利用者に計画相談を提供したいという思いを持っている事業所は数多くありますが、その計画相談に求められているものが何かは、あまりご存じないのでしょう。(正直に言うと、当時の福岡市はあからさまに、「自分たちの利用者は、自分たちで」と言っていたのを私は知っているのですけれど・・・。)不思議なもので、事業展開を考える際に、対象者の確保とニーズは考えるのに、その事業そのものが「何のために」存在しているのかを深く掘り下げる運営者は少ないのでしょう。また、私自身が、かつて3年半ほど「指定相談支援事業所」にいたことも大きいかもしれません。当たり前のことですが、利用者に対して相談支援を行う中で、私たちが利害関係のない存在でいることは、公正な判断を行う上でかなり重要な要素です。様々な事業所情報を提供するときもですが、特にトラブルが発生した場合は「中立な」立場を担保することでスムーズな解決が可能となります。グループ事業所と利用者がトラブルになったときを想定すれば、イメージがつくのではないでしょうか。そういった小さな信頼の積み重ねが、最終的に選ばれる計画相談事業所となるのだと思います。逆に「自分の事業所だけ」「自分の事業所に誘導するため」の計画相談事業所は、計画相談の売り上げ云々をいうこと自体がおかしいことに気がつくはずです。おそらく、そういった事業所に所属する相談支援専門員が、次々に辞めていくのだと思います。その理由は、相談支援をすることで直面する様々な問題に対峙することでしか理解できないので、運営側からしか見えない状況では、理解できることも知る由もないからです。

※1 誘導とは、最初から同法人の事業所を利用するにあたり、計画相談も利用をするように促すことです(事前に、行政にも、紹介先にも事前に誘導しないようにお伝えします)。但し、私の担当する利用者が、たまたま同法人の事業所を利用する場合は、事前に利益とリスクをきちんとお伝えした上で引き続き担当します。
※2 計画相談として、同法人事業所を紹介する場合は、それ以外の選択肢がないか、他の事業所を紹介した中では、サービス利用につながらなかった場合のみと決めています。あくまで選択肢のひとつということで紹介しています。

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