孤独との戦い

計画相談の相談支援専門員として実際に業務に従事していくと、所属している法人の考え方がここまで私たちの対応に影響するのかと改めて思うかもしれません。単独事業所であれば、みなさん自身の思うがままに発言、行動することができると思いますが、所属法人があれば、所属法人の方針や考えが頭をよぎるかもしれません。その所属法人が、みなさんに何かあった時に手を貸してくれるかどうかは、計画相談の本質的な役割を担う上で、大変重要なことなのですが、おそらく、多くの計画相談の相談支援専門員は、そこに不安を抱えているのではないでしょうか。みなさんは、毎日、目の前にいる利用者やその家族と向き合っています。その時々で、柔軟性、臨機応変さも求められます。利用者やその家族と向き合うなかで、いろんな場面において、その背景や生き様を深く知れば知るほど、こころが揺さぶられる経験をすることでしょう。「なんとかしたい」「どうにかしたい」そういった考えを持つこともしばしばあると思います。(こういった考えの善し悪しは、今は問わないとします。)しかし、同時に「法人が許すかな?」「法人は守ってくれるかな?」と利用者に向き合いながらも、所属法人のことを考える必要に迫られることで、その場でみなさんは、自信を持って利用者やその家族と向き合えない場面に直面します。計画相談は、事業所内に留まって行う仕事ではないので、内勤の職員から「何をしているかわからない」「外であそんでるんじゃないの?」などと、ときに厳しい声を投げかけられることもしばしばです。私たちは、法人の名前を背負って仕事を行い、法人の信頼を損ねないように、注意深く業務に取り組んでいるにも関わらずです。そうやって、心折れていく相談支援専門員を、私は本当にたくさんみてきました。「法人はわかってくれない」「収入にならないと直接言われた」等々・・・。計画相談の相談支援専門員は孤独です。真摯に相談支援専門員として従事している方であれば、おそらくそう感じているはずです。法人内でもなかなか理解してもらえないもどかしさ。話を聞いてもらっても、部署が違う上司も同僚も、相談支援の現場がわからないのではっきりとした返事がもらえない。そして、そのことによりもたらされる漠然とした不安。日々、抱える問題に悶々とする毎日。なんのために、計画相談があるのか?そもそも運営はこれでよいのか?困った時に、誰に助けを呼べばいいのか?考えても考えてもキリがありません。

それでは、単独の計画相談支援事業所はどうでしょうか?確かに、支援を行う上での相談支援専門員の精神的負担は少ないはずです。何よりも「自己責任」において、発言や行動は自由です。自分のやりたい形の相談支援を選択することも可能です。そうやって努力してきたことに対して、利用者や家族からのささやかな感謝のことばに、みなさんの相談支援としてのモチベーションも維持できるでしょう。しかし、反面、ひとつひとつの相談支援専門員としての行動や発言には、「自己責任」がつきまといます。利用者や家族との信頼関係のもつれからくるリスクは、意外にも大きいものと言えます。また同時に、現場のことだけではなく、経営も考えていく必要があります。なぜなら、厚生労働省の将来の方向性は、地域の計画相談支援事業所を増やすよりも、1事業所あたりの相談支援専門員を増やすことを推奨する報酬体系となっているからです。今後、さらにその方向で進められると言われています。それは、介護保険の歴史をみれば一目瞭然で、私たちが計画相談を立ち上げた以上、自己犠牲を図らない限りは、相談支援専門員の拡充をしていくしかないとも言えます。だからこそ、計画相談支援事業所は増加していきながら、最終的には緩やかに集約(もしくは廃業)していくようになると思います。自分のやりたい相談支援の形を、同じ方向性を向いた仲間とともに築いていくしかないのかもしれません。ただ、どちらの形を選ぶかもみなさん次第ですが、どちらを選択してもみなさんの負担の大きさは変わりがないのかもしれません。ちなみに、ノーマの将来の方向性は、相談支援専門員の拡充の方向で進んでいきます。それは、地域のニーズにあわせたものであり、計画相談支援事業所としての役割を担うためです。事業所は拡充しても、私たちがやり遂げたいのは、範囲の拡大ではなく「深化」です。そのために、担当範囲をさらに狭めていく計画も予定しています。そのための地域の棲み分けも進めます。それは、勝ち残るということではなく、地域のニーズから役割をいかに担うかを考えた結果です。

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