事業所の名前の由来となったレストランが閉鎖するというお話。

2015年の冬、私がはじめて海外視察研修に参加するために、デンマークコペンハーゲンに赴き、それ以降もデンマークに興味を持ち続ける中で、世界一に5回輝いたnoma(ノーマ)というレストランがあることを知りました。人生で4度目にコペンハーゲンを訪れた時には、もちろん食事をするための費用は高額であり、予約を取ることも困難なので、実際に食事をしたことはありませんが、はじめてnomaの入り口まで行き、入口の写真を撮ったことは、今でも良き思い出です。



nomaが世界からなぜ評価されたのか?

それは、レネ・レゼピという若きひとりの料理人によって、厳しい環境から食材に乏しいとされた北欧の地で、北欧の食材のみを用い、その調理もフランスやイタリア、日本のような質の高い食文化と確立された調理法にこだわることなく、独自の調理法を生み出して、まさに『ゼロから「北欧料理」というジャンルをつくりあげた』ということが、世界の美食家たちを唸らせたのです。

当時の私は、移行期間としていた平成24年4月から始まった計画相談支援を、全国でも特に導入が遅れていた福岡、筑紫地区で平成26年2月より始めたばかりで、まさに地域でゼロから計画相談を始めたばかりの状況のでした。このnomaが『0から北欧料理というジャンルを作り上げた』ということを知ったとき、私自身がこのnomaに対して、「0から生み出すことの苦しみ」と、当時、自分の計画相談としての「アイデンティティを確立できずに苦しんでいた自分」を重ね、一種の憧れを持って、新たな事業所の名前を拝借し『noma(ノーマ)』としたのです。この時、私は世界一、日本一にはなれないけれど、地域で一番に選ばれる計画相談支援事業所になりたいと思いながら取り組み、今の私があります。


そんな私にとっての精神的な存在であるnomaが、2024年で閉鎖するという衝撃のニュースが飛び込んできました。

https://toyokeizai.net/articles/-/645516?display=b

ニュースのサムネイルを開くのも、実際に読んだ後に知ることになる「閉鎖」の現実を受け入れるかといった葛藤があり、クリックすることを躊躇する自分がいたのには驚きましたが、その内容を読み、その内容が『サスティナブルであるために変化する』ということに、私は一種の感動を感じました。

もちろん、レストランのnomaと、私が行なっている計画相談のnomaを一緒に並べることは、はっきりいっておこがましいことなのは重々承知しているのですが、それでも、私にとって計画相談としてのあり方、考え方、精神性という点では、とても私にとっての支柱であり、学びの対象でもあります。

記事の中に、レゼピ自身が「過酷な労働時間と激しい職場文化を持つ高級店は限界点に達している(“It’s unsustainable.<持続不可能>”)」と語り、その解説には、ノーマに代表されるような高級飲食店をはじめとして、すべてのレストランの業務形態が持続不可能になりつつあるのは周知の事実。この世界的な問題を解決しなければ、食の未来はないと言われている。

最近、私自身も障害福祉業界に身を置くようになり、利用者の人生や命に関わる仕事をしている大切な業務にも関わらず、同様の問題はまさに今、私たちのもとにも降りかかりつつあると感じています。それは、突然、事業所が閉所になるといったことが、本当にここ数ヶ月の中でも数件、耳にするようになったことからも明白です。しかも、その背景を聞いてみると、多くが「人材がいない」「配置基準が満たせず減算となり、事業所を維持できない」といったことがほとんどです。ひどいところになると、職員が全員、退職してしまった・・・ということも。

私が担当する地区においても、福祉業界の抱える構造的な問題だけではなく、改善しない労働環境、低い賃金や経験や実績を重ねても昇給もない、数字ばかりを追うことを求められ、その解決に向けた協議や話し合いの場はなく、責任ばかりを押し付けるといった現場の不満といった、人材不足といった社会情勢に適応するための変化ができない、古い考えのままの組織や法人運営によって、大量に人が辞めていくといったことも現実に起きているようです。

それは、高級レストランとよばれる環境でも同じような状況があるなかで、nomaは、このままでは「持続不可能」だと感じ、自らを変化することを決心したことは、ある意味、経営をも行う私にとっての、こころの奥底にあるモヤモヤを十分に晴らしてくれるような内容でした。『閉鎖はするが、業態を変えるため。』『時代の変化に適応するため。』その確立した状況に満足せずに、変化を求めることは、今、私にとって本当に必要なことだったように思います。


未だ、このnomaから、私は多くのことを学んでいるのです。


私も、このnoma3.0に追い従いするかたちで、私たち計画相談支援室ノーマも、継続性を担保する、継続責任を負うために、柔軟に変化をしていこうと思っています。地域に、地域で最も質の高い計画相談支援を提供するために、これからも謙虚に、直向きに、取り組んでいければと思っています。


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