形骸化する直B就労アセスメント 第25回福岡筑紫地区就労支援事業所運営連絡会(通称:原点回帰の会)のご報告

 







支援学校卒業後の進路先として、就労継続支援B型の利用を希望される方には、学校在学中に就労移行支援事業所または、障害者就業・生活支援センターなどが行う、就労支援の専門的視点に基づく「就労アセスメント」を経過して、就労継続支援B型が妥当という判断の上で利用ができるという流れになっているのは、多くの方がご存知だと思います。

就労継続支援B型事業所が利用できる対象者を調べると良くわかります。

就労移行支援事業等を利用したが一般企業等の雇用に結びつかない方や、一定年齢に達している方などであって、就労の機会等を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上や維持が期待される方。具体的には次のような例が挙げられます。
(1) 就労経験がある方であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった方
(2) 就労移行支援事業を利用(暫定支給決定での利用を含む)した結果、B型の利用が適当と判断された方
(3) (1)(2)に該当しない方であって、50歳に達している方または障害基礎年金1級受給者
(4) 障害者支援施設に入所する方については、指定特定相談支援事業者によるサービス等利用計画の作成の手続きを経た上で、市区町村が利用の組み合わせの必要性を認めた方
※WAM NETより抜粋しました

私たちが俗にいう「直B問題」「就労アセス」というのは、(2)に記載されている部分に相当します。

そもそも、継続支援B型とは、就職に向けていろいろと手立てを行なってきたものの、なかなか就労に結びつかない方、もしくは、就職するまでにはかなりの支援または時間を要する方に対して、時間を限定せずに訓練を行う環境を提供するという前提があるため、就職のための訓練や雇用に向けた支援を受けたことがない卒業したばかりの方が利用できないサービスになっているのです。少し穿った言い方(乱暴な言い方)をすると、卒業したばかりの学生の可能性を、期限もない福祉事業所に通わせることでつぶさないためのルールと言えるかもしれません。

しかし、実際にはあきらかにB型が妥当である方がいるため、そういった方に対して、卒業後、スムーズにB型に行くための代替案として、学校在籍中に就労支援の専門事業所でもある就労移行支援が行う「就労アセスメント」を行うことで、雇用のための支援を受けたことにする、いわゆる「抜け道」として「就労アセス」は存在します。
(当然、年齢がいくつになっても、一度も就労移行支援や就労継続支援A型、就職経験等がなければ、「就労アセス」が必要になります。)

そのため、多くの学校の先生が、「行き先としてB型が決まっていますんで!」といって就労アセスを事業所に求めてくるのですが、ここで、事業所側としても納得できない事案が出てきているのです。

そもそも、B型を希望している方に対して、B型に行くなとは事業所側からしても言うことはできません。やはり、そこには本人や保護者のニーズがあるわけで、そのニーズを無視するわけにはいかないからです。例えば、どんなに「就労アセス」を行なって、A型でも就労でもよさそうだなと思っても、本人や家族がB型に行きたいと言えば、それを否定することはできないということです。

もっと言ってしまえば、学校側と面倒なことを起こしたくないという事業所側の思惑があるのが本音の部分なのですが、それ以上に問題なのは、就労アセスメントを行う就労移行支援事業所には、なんの権限もお墨付きもないこと、すなわち、何も言える立場にないというところに問題があるのです。

今回の研修でも少し話題として出たのですが、就労アセスを行う事業所が、地元の市町村から指定を受けていたら、少しは変わるのではないかと思うのです。例えば、「○○市障がい者就労アセスメント指定事業所」と言ったような、就労アセスを行うことができる就労移行支援事業所として行政にお墨付きをいただければ、指定事業所として責任を持って対象者の就労アセスメントを行い、現状をしっかりと把握し、ご家族が学校に提示しようとするでしょう。その報告を通して、B型に行くもよし、別の道を検討するもよしであれば、本来の就労アセスのあり方につながるのではないかと思うのです。

なんども言うようですが、就労アセスメントの結果がどうであれ、行き先を決定するのは、本人であり、ご家族なのですから、移行支援や就労の力があっても、B型に行くこと自体は否定されないということです。

では、就労アセスの現状はどうかというと、本来、厚生労働省は就労アセスを約1ヶ月と基準を示していますが、実際は、学校の都合、保護者の都合(障害福祉サービスと児童通所支援施設の並行利用ができないため、実習中は、放課後等デイサービスが使えないという課題もあります)、そして、受ける福祉事業所の都合もあり、就労アセスメントの期間は、概ね2週間程度がスタンダードになっています。目的や意義を理解していない事業所においては、学校や家族のニーズのみで1〜3日でアセスメントを行うといった事業所もあるようで・・・。

こうやって、すでに就労アセスは、完全に形骸化している実情があるのです。形骸化しているものを、事業所として真面目に取り組むのも正直骨を折りますし、最近は、「当事業所では、最低でも就労アセスメントを行うのに2週間は必要です」と就労アセスの依頼があった学校側に申し出ると、嫌な表情をあからさまに出す先生もいます。要は、3日間くらいで終わらせてほしいと思っているわけです。

そして、事業所から出された就労アセスについては、行政や第三者機関からのチェック機能もないため、正直、事業所側もやりたいほうだいと言えるのです。その結果、A法人が運営するB事業所(就労継続支援B型)に通うために、A法人の運営するC事業所(就労移行支援)で就労アセスを行うということも、容易に認められるわけですね。もはや、誰の、何のための就労アセスなのか?ということになるのです。


以上のようは話が、昨日の原点回帰の会では話があったのですが、就労系の事業所に勤めていて、直B問題、就労アセスに関する問題を知らない方は、是非、知っておいてほしいなと思います。ちなみに、直Bの問題については、私も導入する前からブログに書いていたことを思い出しました。あのときは、関西の新聞社から電話取材があったなぁ?

他にもたくさんの就労に関する話題が上がっていました。B型の平均工賃に応じた基本単価って、本当にたくさんの支援が必要な方が多い事業所からすると、支援量が必要なのに単価が低いという地獄でしかないわけで。これを良しとする考え方と、B型のあり方としてはどうなんだ?という考え方と、いろんな意見や思いが出されたような気がします。

就労分野で勤務している人だけではなく、もっと広い範囲で就労分野を知ってもらえる機会になればいいなと思っています。ぜひ、次回も参加してくださいね〜!



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