計画相談の相談支援専門員がトラブルから身を守る方法

トラブルに直面すると、直接降りかかってくるものではなくても疲れちゃいますよねぇ。



計画相談を行うなかで、時折、利用者やそのご家族と事業所とのトラブルに巻き込まれることがあると思います。誰もが、トラブルを起こしたくない、巻き込まれたくないと思うことが普通ですが、どんなに気を配っていても、そういったトラブルに相談支援専門員として直面することを避けることはできません。

普段から利用者と事業所の間に発生したトラブルに挟まれて、計画相談の相談支援専門員として介入する場面は、1度や2度ではないと思います。しかし、そういったときに、私たち計画相談の相談支援専門員である私の身を守ってくれるのは、残念ながら私たちが所属している法人でもなければ、上司や先輩でもありません。実は、これまで積み上げてきた私たちと利用者やそのご家族、そして事業所との「信頼の貯金」なのです。

では、その「信頼」はどのように積みあげてきたかといえば、利用者やそのご家族、事業所に対しても、「公正であること、あり続けること」「中立的立場を決して崩さないこと」なのです。あくまで、どちらも贔屓目で見ずに、お互いの権利を擁護して貯めてきた「信頼の貯金」をベースに、私たち計画相談は、あくまで第三者の立場に徹して、お互いの訴えを受容し、相手が放つ怒りの感情を冷静に受け止めつつ、あえて審判的な態度をとらならないことなのです。それは、ソーシャルワーカー業界では、絶対的なルールである「バイスティックの7原則」を直向きに守ってきたかが問われるのだと思います。

トラブルというものは、私たちが、必ずしも「正当な理由」をお互いに突きつけることで解決できることは、ほとんどありません。よく「真っ当な正義を突きつける相談支援専門員」「周囲にいる誰もが納得できる正当な理由を突きつける相談支援専門員」がいますが、それこそ、相手をさらにヒートアップさせるだけなのです。その背景には、「対象者に有無を言わせないようにしたい」「ぐうの音も言わせないようにしたい」、そのことによって解決を図りたい、トラブルを収めたいという思いがあると思います。

ただ、そういった行動や言動をお互いに示したところで、おそらく解決に導くことはありません。トラブルというのは、相手が正当な理由を理解していないから生じるものではないからです(いや、むしろそんなことはどうでもよいのかもしれません)。トラブルの多くは、心情的に受け入れられない、納得できない何かしらの感情的理由が存在すること、その理由にどんどんと尾ヒレ、背ヒレのような、あくまで事実かどうかもわからない小さな不満がくっついてきて、徐々に巨大化して、最終的には自分でもどうしてよいか、何を伝えたいのかわからないけれど、引くに引けないといった状況なのです。

であるならば、トラブルの多くは、後にも先にも「不条理」「理不尽」なことがほとんどということになります。いつも、解決したあとは、「そもそも、原因はなんだったんだ?」ということになってしまうのです。であるならば、その問題を解決するために必要なことは、問題に向き合うというよりも、とにかく第三者的な立場でお互いを受容して、感情をことばにのせて発散させていくことで、お互いの怒りのパワーを削ぎ落としていきながら、お互いが歩み寄っていき、落とし所を探っていくほうが解決の近道なのだと思うのです。


しかし、このときに計画相談の相談支援専門員に重要かつ必要なことは、「公正かつ中立的な立場でいることができるか?」なのです。


これがもし、利用者やそのご家族を担当する計画相談であり、トラブルの対象が、計画相談と同じ法人であるならば、その時は、そのトラブルを解決に導くためには、更なる困難が待ち受けるのです。それは、相談支援専門員として第三者の立場、公正中立を保つことができないことを意味し、私たちがどんなにお互いを受容しても、最終的には、「結局、あなたも同じ法人なんでしょ?」「事業所の肩を持つわけでしょ?」になるのです。

よく、行政機関も「自分の法人の利用者なので、同じ法人の計画相談で見てあげてください」という方もこれまで数多くいましたし、同じ法人の職員も、「楽だから、法人内の計画相談で面倒を見てよ」と言ってくる方もたくさんみてきました。これがいかに「自殺行為」であるかは、これまでの説明を聞いていた方であれば理解できるのではないでしょうか?

計画相談の相談支援専門員をトラブルから救うことは、結局のところ、法人や法人が運営する事業所を守ることになることも理解しておくべきだと思うのです。


ちなみに、「公正かつ中立的な立場でいることができない」状況で発生したトラブルは、弁護士が必要になったり、市町村、自治体、運営適正化委員会、挙句の果てには裁判まで行きますのでご注意ください。

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