計画相談をはじめる前に知っていて欲しい3つのこと。

私自身もそうだったのですが、私は自ら望んで計画相談をはじめたわけではありません。

はっきり言えは、当時の法人理事長及び上司の説得(最終的には指示)によるものといっても過言ではありません。確かに、私自身は、精神科における医療相談室や、委託相談支援センターが併設されている地域活動支援センターⅠ型にいたこともあり、おおよそ、相談支援がどのような現場かは、指示してきた上司よりもはるかに理解していたといえますが、かえって相談支援の現場の大変さも知っていたからこそ、簡単には受け入れることができませんでした。

だからこそ、安易に計画相談支援事業所を勧めてくることに抵抗もあったのですが、やはり、上司の指示には従わざるをえまいという気持ちになり、引き受けることにしました。今は、ひとりで100数十名の利用者を抱える相談支援専門員としての責任もあり、よろこび半分といったところですが、私自身は、相談支援の仕事は決して嫌いな仕事ではないと確信しています。

ただ、私が計画相談を始めた頃は、まだ計画相談の黎明期と呼ばれる時代でもあったため、すべてが見様見真似の中での業務であり、「何をどうすれば良いか?」といったことを考える暇もなく、ただひたすらモニタリングと計画案の作成に明け暮れる日々だったので、今、計画相談をはじめる方々とは違った苦しみがあったと思います。

そんな私が、今から計画相談をはじめようとする方に3つのアドバイスをしたいと思います。もしよろしければ、目を通してもらえたら嬉しいです。


①まずは計画相談のペースをつかむこと

働き方改革や、ワーク・ライフ・バランスが謳われるようになった現在、計画相談の働き方は、「自分ですべてを決めることができる」という大きな魅力があります。また、現場に縛られずに、すべて自己責任で自分の判断で行動できることも、福祉として新しいスタイルといえるでしょう。おしゃれなカフェで書類作成ができるのが、計画相談の相談支援専門員でもあります。しかし、その反面、現在は、安定した仕事のペースを掴むまでに、だいぶん時間を要することも確かです。私の時代であれば、4〜5ヶ月で200名を超えることもありましたが、今や、新規は月に数件のペースとなってきている地域がほとんどです。であるならば、1年が経過しても、60〜70件の利用者となってきます(地域によっては、モニタリング頻度がふえているので、これでも十分やっていけるとききます)。ゆっくりとしたペースでじっくりと利用者と向き合えることができるのは、実際にはこの時だけだからこそ、自分の業務としての計画相談のスタイルと、その限界ラインを引くことも大切な要素となります。

と同時に、計画相談を始めた以上、私たちはこの業務で安定して食べていかないといけません。パート的な考えで業務を行うことも可能ですが、事業所を運営する、そして継続することは、並大抵なことではありません。税務や労務といった管理業務もすべてひとりで行うならば、計画相談は並大抵の努力がないとおそらくできません。税理士や社会保険労務士等に外部に委託するならば、少なくとも委託費を払わないといけません。であるならば、おそらく毎月、数名分のモニタリングの収入は、その方々の委託費用に取られてしまうでしょう。思いの外、件数をがんばんないと・・・なんてことになってしまうのが関の山です。

自分のペースを掴む上でも、まずは、計画相談に集中すること。自分の働き方、仕事への向き合い方を、計画相談をはじめる以上、軸にして行なっていく必要があると思います。


②いざというときに、気軽に何度でも相談できる同業者を見つけること

計画相談をはじめて最初に困ることは、実は計画案やモニタリング報告書の書き方でもなければ、計画相談の進め方でもありません。では、何かと言われたら、それは「請求業務」です。私たちの仕事は、ただ計画相談を行なっただけでお金に変わるのではありません。業務を行なったら、まずしなければならないのは、月末に締めてから、国保連に慣れないPCソフトを使って請求をするという行為です。しかも、地域特有のルールもあり、請求はシンプルどころか煩雑だったりもします。加えて、PCが苦手だったら、いよいよ地獄行きです。そういった細かい仕事を、気軽に何度でも尋ねることができる人をみつけておくことが、何気に重要だったりします。

また、計画相談を進めるなかで、どうしても本来の流れに沿わないケースという問題に直面します。「こういった状況のときは、どのように進めるべきなのか?」その答えは、自治体や厚生労働省、日本相談支援専門員協会のテキストやガイドラインにも載っていないことが、実はたくさんあるのです。そのときに、みなさんがひとりで右往左往していても、何も解決しませんし、その時間は、無駄な時間になってしまうだけではなく、結局、利用者ご本人を不安にさせてしまったり、請求ができなかったり、エラーで返戻になってしまったりと、みなさんの計画相談業務以上に、混乱と負担が生じる可能性もあります。

まずは、計画相談にまつわることを気軽に相談できる同業者をみつけておくことをお勧めします。


③担当地域、担当分野など、利用者を受け入れるに当たっての自分なりの基準を持つこと

私たちは、当然、ジェネラリストでいること、選ばずに受け入れを行うことが、社会的使命として求められていることは、まず理解しておく必要があります。しかし、実際には、安易に受け入れることで、その負担の対象となってしまうのは、私たちではなく、利用者でありそのご家族でもあります。やはり、そこは、私たちにも受け入れの限界があり、得意不得意があることを認識する必要があります。

また、別の側面からいうと、担当範囲を広げることで、時間的なコスト、そして移動コストが大幅にかかることも予想しておくべきです。かといって、小さな範囲で行えば、新規の受け入れも少なくなることは避けられません。新規のペースが緩やかであればあるほど、経営が厳しくなってきますし、そういった状況が続けば続くほど、当然、みなさんも精神的に苦しくなってきます。経済的な原因による精神的負担は生半可なものではありません。そんな中では、私たち相談支援専門員も良い相談支援はできないのです。だから、まずはみなさん自身が、自分の憲法というべきルールを設定することをお勧めします。

なぜ、私がこういったことをここまでいうかというと、かつて私がかなり広範囲に広げて受け入れを行なっていた時期がありましたが、結局のところ、私自身が疲労困憊となり、計画相談を継続できない程の体調不良に陥り、担当範囲を狭める必要に迫られ、一部の利用者さんを他の計画相談に移管をお願いせざるを得なくなったことがあったからです。そのことがどれだけ私にとっての苦しい記憶となったかは、今でもことばに表すことはできません。私自身のわがままで、信頼を裏切り、多大なご迷惑をおかけしたことを、私は今後も心に留めておく必要があるのです。こういった思いが、計画相談としての業務を行う上で、ストレスとしてのしかかってきます。皆さんには、こういったことを経験せずに、まっすぐ業務に取り組んでもらいたいと思います。


利用者やそのご家族にとって、「計画相談の基準」は私たちの対応や行動となります。その基準は、その方におけるすべての計画相談業務におけるスタンダードになってしまうのです。そのことを肝に銘じれば、安易な選択や適当な対応はできないはずですし、他の同業者のためにも、相談支援専門員に対する信用を崩すことはできないはずです。まだ、はじまって10年くらいの歴史の浅い業務だからこそ、私たちは、私たちの責任において、これらの職域を育んでいく必要があります。是非、みなさんも私たち計画相談支援事業の相談支援専門員として、一緒に成長していければと思います。






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