計画相談を10年続けることの難しさ。

いつかのズーム研修。こうやって法人の枠を超えて相談支援専門員がつながる環境が重要。


先日、相談支援専門員向けの人材育成研修を受講してきました。

なんとなく、私のなかで、この研修で語られるであろう内容については、おおよそ、予想はついていたのですが、やはり、相談支援専門員としての業務に従事するにあたり、基幹相談と委託相談、そして、計画相談を一緒にして研修を行う難しさを感じる研修会というのが率直な意見でした。

私自身、「基本相談の重要性」は誰よりも理解しているつもりですが、研修の中でやたらと出てくる「基本相談の重要性」は、考えすぎかもしれませんが、まるで計画相談に対してだけ言われているような印象を受けました。もちろん、その原因をつくっているのは、私たち計画相談支援事業所であり、私たち自身が抱える問題なのですが、それ以上に課題なのは、私たちは、基本相談の重要性を理解しているにもかかわらず、私たちが行う基本相談を評価されることはほとんどないということです。あっても、最初のインテーク時に付与される、「初回加算」のみということです。

にもかかわらず、私たち計画相談の役割は、やろうと思えばどこまでも無限です。しかし、私自身は、自分の中で明確な支援のラインを決めています。このラインは、現状、動かすことはしません。周囲から何を言われようともです。そして、そのことが不満であれば、私と契約しなければ良いだけなので、申し訳ない気持ちもありますが、私の心情はブレないようにしています。

なぜそう思うか?ということですが、私のこれまでの計画相談の実践のなかで、私が限りなく支援を行うことで、最終的に待ち受けるのは、「地獄」でしかないということを肌で実感しているからです。そのなかでも、ボランタリーな計画相談が陥る地獄には、3つの「地獄」があると考えています。それは、


①燃え尽き地獄 ②増えない地獄 ③引き継げない地獄 です。


①「燃え尽き地獄」

これは、私が唯一、私自身で味わった地獄のひとつです。私の場合は、ひとりの利用者にどこまでも限りなく支援を行うということではなく、計画相談の黎明期から計画相談を行ったひとりとして、ひとりが受け入れられる限界を超えた人数を受けてしまったことによる「燃え尽き」を味わったということです。1日4〜5件の新規やモニタリングを行い、毎日、深夜12時を回る生活を毎日続けていました。妙なテンションで仕事を続けていましたが、あるとき、極度の体調不良が生じて、ふと気がつくと、不整脈でまともに心臓の鼓動が聞こえない状況に陥ってしまいました。過労とストレスによるものと診断されましたが、また、同じやり方をしていたら、きっと計画相談はやめていたと思います。

そして、現代の「燃え尽き地獄」は、私のようなカタチではなく、支援者としての限度を超えて支援を行なったことによる、利用者と相談支援専門員間のいびつな関係性によるものが多いと思っています。その原因をここで述べると、これだけで数千字書いてしまいそうなので、ここでやめておきますが、おそらく、わかっている相談支援専門員は、すでにわかっていると思います。


②「増えない地獄」

確かに計画相談支援事業所の設立の話は頻繁にあっているのですが、地域に増えない現状もあります。それはなぜでしょうか?答えは簡単です。設立している事業所と廃止している事業所があるからです。

廃止の原因・理由は様々ですが、主に、「運営法人の一方的な方針変換」と、「相談支援専門員の離職・確保の難しさ」が主な原因です。運営法人の一方的な方針変換にも、「計画相談の事業に対する貢献度の低さ(低い利益/高いコスト)」「計画相談の運営の難しさ(事業所に対する周囲からの評価)」があり、正直に言うと、運営法人の計画相談に対する取り扱いが難しく、面倒なのだと思っています。それに、「相談支援専門員の確保の難しさ、離職の高さ」「相談支援専門員の質の確保の難しさ」などが加わります。そのため、リスク回避のために、大手の社会福祉法人やNPO法人といった、本来であれば、利益を事業に回さないといけない法人ほど、先に、縮小・撤退している現実があります。

大袈裟かもしれませんが、最近は、新しい事業所ができたことを理由に、計画相談を閉めるところもあるように思います。なぜなら、引き受けてくれる事業所を待っていたということかもしれません。

そして、相談支援専門員の離職の原因は「孤立」です。法人からの「孤立」、法人内事業部からの「孤立」、そして、現場でトラブルが発生しても、誰も支えてくれないサポートがない「孤立」です。

孤立には、相談支援専門員に対する法人からの売り上げに対するプレッシャーも挙げられます。法人から、「計画相談は赤字なんだが、どうするんだ?」と直接的に言われたり、いろいろ言われないにしても、例えば、法人全体の会議で、全事業所の売上高の話になると、何も言われない分、返って周囲からの疎外感を感じたり・・・徐々に、相談支援専門員のこころが削られていることには、誰も気が付かないでしょう。だから、辞める人が後を立たないのです。

このように、相談支援専門員が一生懸命頑張っても、徐々に心が折れてしまう傾向があります。それが、相談支援専門員が事業所内外で増えない原因でもあります。また、相談支援専門員が辛い状況で勤務すればするほど、誰も相談支援専門員になりたがらないという実情があります。相談支援専門員は、事務屋だと思っている人もいます。だから、私たちが役割を超えて仕事をすればするほど、その疲弊した姿をみて、誰もやりたいとは思いません。最近は、ワーク・ライフバランスの視点でみれば、優等生と言われがちですが、実際には、見えないストレスに苛まれ、増える要素はあまりないのです。


③「引き継げない地獄」

「引き継げない地獄」は、事業所が足りないから引き継げないということではありません。「引き継げない」本質的な理由は、全くもって計画相談事業所から、計画相談の仕事を行なってもらえずに、計画相談に対する強い不信感だけを抱えている利用者や、ボランタリーで、計画相談の限度を超えた支援を行なった、ある意味、引っ掻き回すだけ引っ掻き回した計画相談支援事業所の相談支援専門員が抱える利用者は、次に引き継ぐ事業所でトラブルにしかならないため、他の計画相談支援事業所から引き継ぎを断られてしまうという事態に発展してしまうことによるものです。この原因は、計画相談の相談支援専門員が、本来行うべき計画相談の役割を理解していないことによるものだと思います。

私は、相談支援部会でも、口を酸っぱくして伝えるのは、『私たちが計画相談の業務を超えて限りなく業務を行えば、その地区は確かに助かるかもしれない。しかし、そのことで、本来の役割を担うべき相談支援機関が成長しないどころか、私たち計画相談が疲弊して、「良い支援者」から次々辞めていくことになることを肝に銘じるべき』ということです。いや、実際に地域はそのようになりつつあるのです。


私は、だからといって、みんな同じルールで計画相談を行うようにすべきとは思っていません。それぞれの特色ある計画相談があることで、利用者も助けられると思いますし、私たちも連携を図りながら、適切な計画相談につなぐこともできるからです。ただ、これだけ曖昧な状況で、本当の計画相談を地域に育てていくためには、行政や各サービス支援事業所なども協力して、私たち計画相談を育てていってもらう必要があります。相談支援専門員の想いや力量を頼りにしていても、次世代の計画相談を担う相談支援専門員は生まれないのです。


私にとっての計画相談に対する人材育成は、何よりも先に、いかに私たちの役割を理解した上で、燃え尽きない、孤立しない、向上心のある相談支援専門員を地域に根付かせるかなのです。


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