計画相談が抱える本当の苦しみ
みんなわらってるけど、毎回会うと、経営や運営、人材の話ばかりしてるんですよ・・・ほんと。
計画相談という事業所は、みなさんにとってどのように映っているのでしょうか。
私たちの業務は、担当を持っているから給付費が入ってくるのではなく、利用契約者が多いから、売り上げが上がるわけではありません。
くれぐれも勘違いしていただきたくないのは、私たちはあくまで「計画案の作成」「モニタリング」を行なってはじめて給付費を頂くということです。
ただ、そもそものお話ですが、本来行うべき、モニタリング等の業務ですらまともにできていない事業所は、周囲から指摘されても仕方ないと思います。
ただその上で、みなさんにお伝えしておきたいのは、計画相談支援事業所とは、固定化されたモニタリングや計画作成の業務を行なった上で、それぞれの相談支援専門員の考え方によって、その支援内容に違いが生じるということを理解してください。
ある相談支援専門員は、『自分の取り分(給与)はそこまでいらない。仕事として、これまで以上に自分のペースで、ゆっくりと利用者と関わることができる相談支援専門員の仕事が好き』という方がいます。
そういった方は、契約者数やモニタリング数を増やすことは気にせず、時間をかけた、細部までこだわった、丁寧な支援を行うかもしれません。
ある相談支援専門員は、『我が子が進学して、学費などのお金がかかるから、取り分(給与)は必要。仕事の効率を気にしながら、努力を重ねて、他の相談支援専門員よりも、業務量を増やして、売り上げを確保していきたい』という方もいます。
そういった方は、契約者数を増やして、1日の細かいスケジュールを組み、効率良く支援を行いながら、売り上げをあげるかもしれません。
みなさんであれば、前者は「質の高い」計画相談と評価するかもしれませんし、後者は、「仕事が早い」もしくは「あまり話ができない」計画相談と評価するかもしれません。
しかし、私から言わせれば、どちらも正解であり、どちらにもメリット、デメリットがあると思います。もっと踏み込むならば、一見良さそうにみえても、個人的には、必ずしも「前者」の状況だけを評価したいとは全く思いません。
計画相談にとって、「質が高い」とは、いったい何でしょうか?
みなさんが「質が高い」という評価を行なっていたとして、その事業所がおよそ3年で事業を辞めてしまったらどうでしょうか?
それは、みなさんにとって安心して利用できる「質の高い」計画相談でしょうか?
計画相談を継続することは、実は思いのほかとても大変であることを、是非、知ってほしいのです。
もちろん、私たちが相手にする対象が「人」である以上、効率化を求めるには限界があります。動けば動くほど、様々な経費もかかるなかで、大手の多機能型の事業所さんのように、別の事業の利益で赤字分をカバーしてもらえる計画相談ばかりではありません。
そのことを誰よりもわかっているからでしょうか?大手の社会福祉法人さんやNPO法人さんが、軒並み計画相談を縮小・撤退するというお話はよく耳にします。
はっきり言ってしまえば、計画相談支援事業所を設立し、相談支援専門員を配置すること自体が、事業所運営にとって効率的ではないのです。ぶっちゃけ、事業運営をする旨味がないのです。
それは、結局のところ、地域に存在する計画相談支援事業所というのは、私たち相談支援専門員の努力によって維持されているのが現状なのです。
そういったことを、基幹相談を含めた、他の機関の方々がどの程度理解しているでしょうか?
なんでもかんでも「計画相談」の仕事として、一方的に仕事の割り振りを行なっていないでしょうか?私たちは、包括的な「委託費」ではなく、完全歩合の出来高制であること、すなわち、民間のお仕事で言えば、「フルコミッション」「売れたら売れた分だけ」であることをご存知なのでしょうか?
完全歩合制とも言える私たちに対して、無理難題を押し付けるのは簡単でしょうが、その方々は、本当に地域における「計画相談」の役割と現状を理解しているのでしょうか?
丁寧な仕事を行う計画相談は、もちろん評価されるべきだとは思いますが、「丁寧過ぎる」「関わり過ぎる」計画相談が、はたして質が高いのかと言われたら、その体制を維持することも含めて、先のことまで考えた上で行なっているとは思えないのです。
万が一にも、実際のところ、相談支援専門員の自己犠牲的、献身的な思いだけで業務を行なっているのであれば、それは結果的に、継続する上で大きな課題に直面することになりますし、本当にご本人のためになっているとは思えないのです。
これは私の実感ですが、担当する人数が少なければ少ないほど、その計画相談には、地域の社会資源等の情報が入りにくくなります。
私たちの多くは、利用者を通じて事業所とつながるわけですから、担当が多い分だけ、つながる事業所も増えるのです。
実際に、私一人で220名の利用者を担当していたときに比較すると、現在は140名くらいまで減ってしますので、事業所の付き合いは一気に減少しています。
加えて、新規もあまり受けませんので、最近の事業所とつながる機会も減少しています。逆に、新しく加入した相談支援専門員の方が、新規利用者をたくさん受け入れている分、私よりも新しい事業所とのつながりが増えています。
また、担当する地域や範囲が広がれば広がるほど、その地区のことを深く知ることは難しくなります。
例えば、100人の那珂川市の利用者がいる相談支援専門員と、100人の那珂川市、春日市、大野城市、筑紫野市、太宰府市のそれぞれに利用者がいる相談支援専門員では、どちらの相談支援専門員が那珂川市のことを知っているでしょうか?
あくまで確率論ですが、その地区の社会資源とつながる量は、その地区の利用者の量にもつながるといえます。
なぜ、私が那珂川市と春日市に限定しているのかといえば、この地区で生活している方々が利用している地域の社会資源と深くつながることができるからです。
であれば、5名の相談支援専門員で、500名の那珂川市、春日市、大野城市、筑紫野市、太宰府市のそれぞれに利用者がいる相談支援事業所は、この地区の情報はたくさん持っていることになります。
だから、相談支援専門員を適時増やして、利用契約者を増やすことは、地域の利用者さんにとっては、「正義」だと思っています。
また、100名の担当を持っていて、担当範囲が広範囲であっても、地域にある計画相談支援事業所の相談支援専門員と積極的につながっている相談支援専門員は、情報を持っている人に欲しい情報を取りにいくことができます。
であれば、つながる相談支援専門員は、担当人数や範囲は関係なくなるといえます。
私は何が言いたいのか?というと、計画相談の質とは、もちろん利用する方々の評価に基づくものであると思いますが、丁寧に行なったとしても、経営が厳しい状況におかれている相談支援専門員は、どちらにしても長続きできないかもしれないということです。
逆に、本来やるべき、モニタリングや計画案の作成、社会資源の情報提供などは行なってくれていて、ふときがつけば、かれこれ7年〜8年のつきがいができている相談支援専門員は、果たして質がわるいのでしょうか?みなさんはどのように思われますか?
それでも、いろんなことをしてくれるけど、数年でいなくなる質の高い相談支援専門員を求めますか?
最後に。
これまで違う福祉事業所で勤務していた方や、場合によっては、基幹相談や委託相談にいた方が、計画相談を行う方は、ぜひ、注意してください。
みなさんがこれまで出会ってきた計画相談の相談支援専門員の中で、きっと、理想とする、目指すべき相談支援専門員像があるかもしれません。逆に、理想とする相談支援専門員がいないから、私がなりたいと思ったかもしれません。
でも、その相談支援専門員を目指したことによって、もしかしたら真似できないほどの苦しみを味わうことがあるかもしれません。それは、経営的なことも含めて、運営を維持することがいかに大変かを知って欲しいのです。
でも、私は、何よりも精神的なこと、身体的なこと、経済的なことも含めて、継続することが最も大切だと思っています。でも、だいぶん弱音も吐いてきました。
それでもこうやって続けてこられたのは、私たちが辞めることで、利用者を路頭に迷わせない、裏切らたくないと思いがあるからです。
苦しくなったら、是非、相談してください。
ちなみにノーマは、今季単独でみると、現在、約300万ほどの累積赤字となっております(苦笑)
コメント
コメントを投稿