福祉事業所を運営するために必要なこと



年末が近づいてきました。

来年をより良い1年にするためにも、今年1年を振り返ることはとても重要に感じています。

計画相談支援室ノーマにおいては、『特に大きな変化はない=安定した事業運営』を行うことができました。

昨年、新しく加入した職員も、地域の信頼を確実に得て、利用契約者数も増やしている状況です。

反面、私は、サービス利用の卒業や、大人になったタイミングで、より若手の相談支援専門員への移行も適時行なっており、受け入れ人数は着実に減少させていますが、個人的には、法人運営にも力を入れる必要があり(というより、法人運営の時間が確保できていない状況もあり)、そちらにも注視していくために、現状維持を行っています。

年齢とともに、体調の不安定さも顕著になってきたことから、今後は少し自分のことにも時間を割こうと考えています。


さて、話は変わりますが、最近、法人運営・事業運営・人材育成について考える機会が増えています。

私たちが所属する法人は、株式会社という営利企業であり、職員総勢18名の小さな会社ではありますが、福岡県下に4事業を運営する法人でもあります。

久留米市を中心に、春日市、那珂川市に事業所は点在しており、運営の統括を行なっている私にとっても、日々、全体を細かく見ることはなかなか難しい状況です。

そのため、各事業所に配置している管理者を筆頭に、役職者には、「自立」「自律」した運営を求めており、代表を含めた私たち役員は、直接的な指示・指導は極力行わずに、現場で話し合い、現場で判断したことを、報告して頂く形をとるようにしています。

当然、私たち法人役員は、これまでの事業運営における経験から、ある程度のうまく「いく」「いかない」の判断はできます。

そのため、各事業所の管理者の報告の段階で、こちら側から言いたいことはたくさんありますが、法人がひとつひとつの行動に対して「口出し」をするようになると、結局、それが「指示」となり、結果、管理者はその指示のみで判断・行動しようとします。

常に、私たちの目が行き届くのであれば、それも可能かもしれませんが、私たち法人役員も全員、直接、現場で働いています(私もノーマで実際に相談支援専門員を行なっています)。

そのため、管理者には、私どもの法人の運営理念、運営哲学、事業所コンセプトの範囲であれば、自分なりの事業運営を行うことができることを保証しています。

そのため、管理者という名ばかりの存在ではなく、自己責任において自由な判断ができるため、やりがいを感じやすい、緊張感のある運営ができます。


しかし、この形を追い求めるなかで、私たち自身もこれまで大きな壁にぶち当たることが数多くありました。

当法人は、新規採用は全体の1割にも満たない状況で、ほぼ、他の事業所での経験がある中途採用組が中心の組織です。

その多くは、これまで様々な事業所で勤務しているものもいますし、自分なりの考えを持って私たちの法人の求人に応募した方が数多くいます。

私たち法人もまた、新卒採用できるほど安定した雇用受け入れができるほどの許容があるわけでもなく、たまたま、タイミングが卒業生を受け入れる時期と重なれば採用できるだけの状況です。

そのため、中途採用というすでに多くの考えや思いを持った方を受け入れる組織として、事業運営を行う必要がありました。

だからこそ、私たち法人は、管理運営は各事業所の管理者に多くを任せつつ、法人側は、各事業所が適切な判断をしやすいように、必要な知識や情報を提供することに徹するのみで、すべての判断は現場で話し合いが持たれ、その結果を重視するようにしています。

また、各事業所の管理者や役職者が抱える運営における疑問には、法人として全力で応えるようにしています。

何より大切なことは、管理者及び各事業所の役職者の任命責任は、すべて法人にあるということを、正しく法人側が自覚することだと思っています。

管理者として、役職者としての適性の判断の責任は、法人が担うべきなのです。


しかし、そういった思いで法人が運営していても、職員がその思いを理解して行動できるまでには、数多くの紆余曲折があり時間を要しました。

急に「自由を保証するから、事業所で話し合ってすべてを判断しなさい」と職員に伝えても、誰もどうしてよいかわからないのです。

だからこそ、長い時間をかけて、研修・教育を重ねてきました。

判断を求めてくる管理者や職員に対しては、事業所できちんと話し合いをして、意見を集約した結果なのかを毎回確認しました。

そして、話し合って決めた内容に対しては、法人役員は、確実に実行させてきましたし、その結果については、フィードバックは行なっても、結果に対して注意をしたり、咎めたりすることはしませんでした。

そういった機会を繰り返し積み重ねることで、今でこそ、各事業所で話し合いを行い、場合によっては相談を受けたりしながら、最終的な判断結果を報告にくるという流れが定着してきました。

ただし、私たちの理想に近い形になってきていますが、まだまだ、改善していく必要があると感じています。

私たちの組織は、高度な知識や技術を持った専門性や人間性を持つスーパーマンが必要な組織づくりは行なっていません。

それは、これまでの経験のなかで、スーパーマンがいる組織よりも、チームで取り組む組織の方が、安定した事業運営を行い、それぞれの持つパフォーマンスを発揮できることを経験上知っているからです。

そして何より、職員一人一人がその場での自分なりの役割を担うことができ、その自己の存在意義を認めることができるからです。

もちろん、私たち法人は、ひとりひとりの評価を適切に行いますが、できないからといって「退職に追い込む」といったこともしませんし、辞める辞めないも含めて、各自に任せています。

私たち法人も、これまで辞めていった人材はいますが、その大きな理由は、法人がその時に提供できることと、職員が許容できることの相違が生じたことが主であり、お互いに納得した上で自主退職する職員がほとんどです。

私たちがその職員を追い込んだり、退職させることは1度もありません。

まぁ、中には法人に大きな損害を与えて辞めていった職員もなかにはいますが・・・


私たちが本当に大切にしていることは、

①正しく法に基づいた事業運営を行い、適切に職員を評価すること。

②管理者及び役職者には、適度な自由を保証すること、判断を任せること、その結果責任は法人が負うこと。

③職員には、3年間の猶予を与え、本人が成長する機会と時間を提供すること。その中での失敗は問わないこと。

です。


これらは、小さな法人組織であり、最小人員で最大の効果を上げるための私たちの考えた結論です。

すべての組織に通用するものでもなければ、難しいマネジメントな知識を学んだ結果ではありません。

今のところ、私たちの経験と実績を積む中でのひとつの結果でしかありませんので、今後は、また少しずつ変わっていく(進化していく)可能性もあります。


今年は残念ながら長年勤務した叩き上げの職員が、家庭の事情で離脱しましたが、逆に、私たちの思いとしては、当法人で長年勤務し、通用した職員だからこそ、他の法人でも大きな役割を担って欲しいと思っています。

私たちが、自分の業務を行いながら、これだけの事業所を運営できているのは、すべての職員の協力のおかげでもあります。

私たち法人は、「すべての職員が、今いる地域で、長期に渡り安心して、かつ自分の力の発揮しながら業務に従事すること。」「職員の負担軽減を図りながら、最大限の利益を獲得し、それぞれの評価に基づいた職員の所得に反映させること。」「喜びも苦しみもともに共有できる組織になること」を目指して、職員にも優しい法人となれるように、引き続き努力を行なっていきたいと思います。


コメント