制度理解に基づいた情報提供の必要性
私が担当する地区は、計画相談の導入率がほぼ100パーセントに近づいているといいます。この地区に限っては、障がい者も障がい児も状況は同じであり、児童を担当してくれる事業所が少ないために、障がい児の方は「セルフプラン」となったりすることもありません。ですので、ひとりの利用者及びその家族には、必ず、計画相談の相談支援専門員が担当することになりました。もちろん、相談支援専門員の力量にもよりますが、地域の様々な状況と社会資源や制度を理解した相談員を身近に持つことができるので、これまで社会資源の一覧表や友人知人の情報、インターネットで調べるしかなかった医療・福祉にまつわるあらゆる情報を、気軽に得ることができるようになりました。反面、専門性の高い、地域の情報に精通した相談支援専門員と契約することが、利用者にとってステイタスのひとつとなっており、将来の不安や心配事を減らし、明るい未来を描く上でも、身近で重要な存在と感じていただけることも増えてきました。
障害福祉サービスや児童福祉サービスは、制度施策がなかった時代に比べると、利用するハードルも下がり、多くの方々に利用していただくことができるようになりました。反面、利用者の将来の自立につながるためのサービスが、そうではない利用のために、自立につながるどころか、むしろ悪影響を及ぼすような状況もみられるようになりました。もちろん、サービスの利用は、家族や支援者の介助負担を減らす目的もひとつにありますが、すべてのサービスの前提として、憲法25条の理念でもある、「人として生まれた以上は、誰もが人間らしく生きる権利を有する」そのためのサービス利用とならなければいけないのです。私たち計画相談は、そういった正しいサービスを利用していただくための指針にならないといけませんし、なんのためにサービスが必要なのか、何のためにこの期間や時間数が必要なのかを一緒に考えながら、提案していく必要があるのです。その提案書そのものが、利用に際して行政の福祉窓口に提出しなければならない「サービス等利用計画」ということになります。ですので、ある方にとって必要なサービスが、必ずしも別の方たちに必要かどうかはわかりません。あくまで、対象者の能力や得意なところを伸ばしながら、反面、支援が必要な課題点や不得意な部分を伸ばしたり、カバーして、誰もができる同じようなことができるようにすることが重要なのです。だからこそ、福祉サービスは「自立支援」と呼ばれており、私自身も利用できるサービスはなんでも利用したいと考えている方がいれば、サービスが何のためにあるのかを丁寧に説明しながら、諭すこともありますし、その方にとって誰が見ても必要なサービスなのに、とにかく遠慮したりする方には、できる限りていねいに関わりを持ち、信頼関係を構築しながら、時には説得し、納得して頂くこともあります。(もちろん、ゴリ押ししたり、圧迫面談をするようなことは一切しません。場合によっては、数ヶ月に渡り、時間をかけることもあります。)社会資源の情報や制度施策の内容を、ただ単にひけらかすのではなく、その人にとって必要なサービスを見極めて、本人が選びやすいだけの選択肢を提供したりするといった、細やかな対応を行うことが、実は、計画相談の相談支援専門員の大きな役割なのです。そこには、相談員の私情は挟まず、本人の自立支援的な視点で、一緒にニーズを確認しながら進めていくことが重要です。もちろん、「何でも知っている」「何でも対応できる」ことが、何より利用者のためになるとは思うのですが、最初から、何でもできる相談支援専門員はいません。みなさんに寄り添って、一緒に探して考えてくれる。そして、その方の能力を引き出すような、なんでも代行するのではなく、そっと背中を押してくれるような、そんな相談支援専門員が本物だと思うのです。
そして、これはあくまで個人的な実感ですが、計画相談の相談支援専門員がついている利用者や家族は、その選択肢の幅が広く、常に様々な選択の可能性を持っている方が多いような気がしています。特に、将来の進路を選択するときの、本人や家族のニーズに基づいた選択結果が、その方の能力に適した絶妙な選択となっているような気がするのです。きっとそこには、それまでの間で得た、様々なサービスについての理解や制度施策に関する情報を得て、ご自身やご家庭の中で考えたり話し合った結果となっているのだろうと思うのです。
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