対話の持つ力
最近になって、対話の持つ力をあたらめて実感することがあります。「対話」というのは、会話と違って、双方向でのやりとりを行うなかで、「相手を否定せずに受け止める」「相手の意見を尊重する」「その発言の真意を深めていく」といったアプローチを保証することではないかと思っています。その保証が前提にあることで、お互いが、相手の本音やそこに至るまでの様々な要因を知る、すなわち、相手の立場を理解するということにつながるのです。また、そこに止まらず、対話を続けた結果、思いにもよらなかった話の展開につながったり、自分にとって想像もしない、新しい「気づき」につながることがあります。これらのことを、単にことばで説明すると薄っぺらいですが、最近、対話の研究会で、テーマに沿って対話を続けるという経験を通して、私自身でそういったたくさんの気づきを、「対話」というシンプルな手段で感じることが増えてきたのです。結論ありきの会議的な会話ではなく、まったく答えは見つからないのだけれど、ただただ、対話を続けていく中で、意外な結果に導かれるといったことは、本当に経験してみないとその「凄み」はわからないのだと思います。
私の個人的な意見ですが、近頃、本人や支援者が集まる会議の席で行われているのは、「答えありき」「ゴールありき」の会話が多いような気がするのです。理想像を追い求めるあまり、いわゆる「結論ありき」の話し合いが多くて、支援者が参加する会議の多くは、あくまで「会議をした」という事実を作るための会議になってしまい、本来のあるべき姿ではないような気がするのです。そのような会議のなかで、果たしてご本人や支援者が、どれだけのその会議の必要性を感じているのだろうかと思うのです。私も確かに支援を行う中で、理想とする結論はあるのですが、その結論はあくまで「私の理想」であって、実際は、ご本人のこころの中から生まれてくるものだと思っています。であるならば、その部分をいかに表出させていくかというところが重要になるのですが、その部分に意識をもって接している相談支援専門員がどの程度いるかは、私自身も含めて甚だ疑問です。相手のこころの奥底にある想いを引き出す唯一の方法は、説得でも誘導でもなく、間違いなく「対話」なのだと思います。その対話を活かすために、私たち自身がその対話の力を感じる必要があると思うのです。
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