その知識や技術を伝えること(その2)

計画相談の本来の役割はコーディネーターであるので、計画相談がアドバイスをすることについては、その関係づくりなどの十分配慮が必要だと言うことを、前回、お話しました。計画相談は、公正中立であることが求められる以上、利用者、事業所のどちらの肩も持つことができないですが、逆を言えば、どちらの肩も持つことができるのです。権利擁護といえば、利用者の権利を擁護するということになりがちですが、私は、事業所にも権利擁護するべきだと感じています。ただし、事業所に対して権利擁護を行うためには、普段からの計画相談としての関わりが公正中立でなければなりませんし、それは、ことばだけではなく、行動に対しても求められると思うのです。どんなに利用者の権利を擁護するにしても、利用者本人があきらかな間違いを犯してしまった場合は、事業所ではなく利用者ご本人に、その間違いを正すことから始めなければなりません。その私が、最初から事業所側の肩を持っていたり(もしくは、肩をもっていると誤解されるような印象を与えていたり)、事業所と同じ法人であれば、それは公正中立とはいえないのですし、おそらく、利用者も私の意見には耳を傾けてはくれないと思います。私は、「公正中立」においてはこだわりをもって取り組んでいます。

次に、事業所にアドバイスをするのは、私たち相談支援専門員ではないということを、私たち自身が理解することです。事業所が求めてもいないのに、私たち相談支援専門員が支援のアドバイスをするのであれば、事業所側からすると単なる「嫌がらせ」か「おせっかい」でしかありません。だからこそ、私たちが事業所に知識や支援技術を伝えるときには、十分な配慮が必要となるのです。その中において、私がもっとも使っている伝え方としては、「ポジショニングトーク」を導入しています。実際に、私の知識は、これまで200名を超える方々との関わりを通して培った、たくさんの情報を聴かせていただいた上で成立しています。私の知識は、(精神障害や児童に関することについては直接支援も行なってきましたが、)直接支援の賜物というのではなく、たくさんのご本人や保護者の皆さんから教えていただいた情報なのです。なので、私のアドバイスは、「ある利用者さんのお母さんが教えてくれたのですが〜」という枕詞が良くつきます。そうすることで、これまでにいろんな事業所の方々とのやりとりがスムーズにできるようになりました。もし、「私の経験上〜」という枕詞だったら、ここまでスムーズに受け入れられない可能性がありました。なぜなら、「(当事者ではない、専門職ではない)それはあなたの意見」と事業所に言われる可能性が高いからです。もちろん、相談支援専門員の中には、当事者の家族や親族である方も多くいます。だからこそわかることもあると思いますが、逆に、(事業所によっては)近すぎて相談しにくいという声も実際にはあるのです。であれば、当事者でもなければ、直接支援の実務経験に乏しい相談支援専門員であっても、求められることは必ずあります。ただ、そうであるからこそ、私たち相談支援専門員は「私からのアドバイス」ではなく、「私が担当している利用者」「経験豊富な先輩保護者」からのアドバイスの方が、より適切だと思うのです。そして、自分の意見を述べる場合においても、いろんな方々の声を聞く中で、最後にコーディネートする意識で「私の意見なのですが、みなさんのお話を伺う中で〜」と、あらゆる意見を聞いた中での、私なりの考えとして述べることが重要なのだと思っています。少なくとも、私は、そういった対応を心がけていますし、今のところ、うまくいっているのではないかと感じています。実際に、これまでの事業所に対しての「私からのアドバイス」は、その場では聞いてくれたとしても、決して受け止めてはくれていないことは数多くありましたから。

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