ソーシャルワーカーとして

「引き受けること、つなぐこと」。計画相談の相談支援専門員は、ソーシャルワークの最前線です。私がこうやって話している内容は、計画相談として従事する上での役割に立って話をしています。ソーシャルワークは、知識と技術の上に成り立ち、それに経験が加わって、私たちの立ち位置やアイデンティティーが確立すると話してきました。当時、なりたてのPSW時代は、本当に失敗の連続でしたが、新人として謙虚に学ぶ機会があったからこその、私なりの考えと、私なりのここでの存在価値が確立しているのです。私は、地域を変える力もなければ、あなたを変えようとも思っていません。研修をしたから、すばらしい相談支援専門員になれるわけではないのです。しかし、その研修が終わった後の、一緒に学んだ人たちの心に、「気づき」が生まれている人は、きっと、ソーシャルワークとしての知識がまたひとつ増えたのだと思うのです。例えば、行動援護の支援員によるお話は、行動援護の奥深さと、支援に関する視点を私たちに教えてくれました。それ以降の私たちは、行動援護の支援員の立場に立って、利用者さんと適切に繋いだり、サービスを勧める上での話の展開が可能となります。何より、利用者に応じた事業所の選定に一役買うのではないかと思っています。そういったことが言えるのは、研修を通して、実践を行なっている人のことばに触れるなかで、私たちなりの気づきがあったからです。でも、私たちは、可能だとしても行動援護の支援員にはなりませんし、相談支援専門員である以上、行動援護の支援員のように支援をすることは、この先、次の相談支援専門員につなぐ際に、相手に迷惑をかけることになるということを、前回「次に引き受ける相談支援専門員の立場」を考えるきっかけとしてお話しました。ソーシャルワーカーは、調整役であり、必要な社会資源につなぐことが役割です。その自覚があるからこそ、私たちは、「信頼関係の構築のプロ」「関係調整のプロ」になることが求められます。これが、ソーシャルワーカーとしての役割だからです。

次に、ソーシャルワーカーは、地域課題に対して、調整力を発揮して、必要なサービスを生み出すための活動をすることも、私たちの大きな役割となっています。現在、私が、先頭を切って地域で支援者の集まりをつくり、またその中心にいるのは、ソーシャルワーカーとして、まだまだ数多くの地域は、計画相談(相談支援)としての役割の最初の段階にも立てていない状況だという「課題」を感じているからであり、そのためにも、相談支援専門員として、まずは、基礎として知識や相談援助技術のベースを上げていく必要があり、また、ひとりで利用者に向き合い、ひとりで悩んでいる相談支援専門員に、近くにいる誰かがすぐに手を差し伸べる体制をつくる必要があると思ったからです。これは、社会援助技術のなかの、「ソーシャルアクション」であり、障害福祉サービスでもなければ、営利にもならない、でも、地域には必ず必要なものだと思うから、福岡でも最初の段階に存在した計画相談支援事業所の相談支援専門員のひとりとして取り組んできた責任として、その役割を担っているのです。そして、その役割は次の世代にバトンタッチをする。そのために、今は周囲に数多くのサポーターが存在してくれているのです。私は、その役割を必ず次にバトンタッチすることでしょう。

また、フォーマルなサービスとして、今、15歳から18歳に限定した「児童発達支援と放課後等デイサービス」をグループ事業所として設立しましたが、その背景にも計画相談としての「地域の声」を聴き続けた結果、提供することを決めた新しい形のサービスです。本来なら、母体法人がある地域に設立したかったのですが、やはりそこは人材の問題があり、久留米には人材確保ができなかった事情があります。であれば、その声が一番大きかった地域の声に応える形で、適切な人材を確保し、この事業を始めたのです。それは、必ずしも利益が上がる事業ではありません。しかし、地域に必要なサービスとしての手応えを感じているのです。それは、計画相談で感じる「地域ニーズ」と、母体法人の長年の児童通所支援施設運営の中ででてくる「支援課題」が重なった結果、誕生したものであり、この地域では目にすることのない初めての形となったことは言うまでもありません。何よりも、多くの地域の同業者が応援してくれており、さらには、子育て支援センターや教育機関、福祉課まで協力して対応していただいています。「支援の行き届かなかった世代のこどもたちに、初めて勧められる事業所ができた」と、支援機関からの声もあり、さらには、見学に来られたお母様たちが涙するほど、この事業所ができたことを喜んでもらえているのは、本当にありがたいです。それでもまた、私は、計画相談を担うソーシャルワーカととしての役割に徹し、私が現場の支援員になることもないし、その事業所を担当する計画相談は、これまで通り私たちではないのですから。これは、前職のNPO法人で学んだ大切な私の運営哲学なのです。

私は、相談支援専門員であり、直接支援を専門とする支援者ではありません。私の役割は、相談支援に期待を持ってもらうことで、知識や技術は持っていても、直接支援に期待を持たせることはしません。相談支援専門員は、相談支援技術の質を向上するのが務めです。次の世代にバトンタッチする上でも、その視点は大切にしてほしいと思います。

ということで、来年4月から、社会福祉士取得のために、改めて専門学校に通うことにしました。受かる受からないよりも、謙虚に学びが得られる良い機会にしたいと思います。

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